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トピックス

新型コロナワクチンの接種前に知っておきたい「ノセボ効果」とは

気にかかる情報、間違った思い込み、悲観的な予測などが体にも影響

 大西淳子=医学ジャーナリスト

プラセボを接種した人に有害事象が現れるのはなぜ?

 米ファイザー社の新型コロナワクチンの臨床試験では、プラセボ群には生理食塩水が注射されました。生理食塩水の正体は、人間の体液と同じ浸透圧の0.9%食塩水ですので、注射針を刺して注入すること以外に健康被害はもたらさないと考えられます。にもかかわらず、プラセボを投与された人たちのうち、最大で3人に1人は、疲労感や頭痛を訴えました(*2)。

 こうした現象は、ノセボ効果(nocebo effect)と呼ばれています。簡単に言えば、ワクチンの接種が疲労感や頭痛などの副反応を引き起こすかもしれない、と不安に思っていると、プラセボを接種されたにもかかわらず疲労感や頭痛を感じる、というのがノセボ効果です。

 ノセボ効果の反対は、プラセボ効果(placebo effect)です。こちらは、有効成分を含まないプラセボであるのに、効果を信じ、期待することで、実際に症状が改善する現象を言います。

 いずれも、薬やワクチン、医療者への信頼や期待、あるいはそれらへの不信や不安といった心理が大きく影響するために現れる現象だと考えられています。

ノセボ効果

プラセボを投与された人に、望まない有害事象が引き起こされること

プラセボ効果

プラセボを投与された人に、症状の改善など好ましい効果が現れること

プラセボ効果で、痛みだけでなく検査値も改善したという報告も

 ノセボ効果はプラセボ効果に比べ、一般にはほとんど知られてはいませんが、ノセボ効果に関する研究も進んでいます。

 例えば、英国で行われたある臨床試験(*3)では、脂質異常症の治療に用いられるスタチンという薬剤の使用を開始して2週間以内に、副作用によって治療を中止せざるを得なくなった患者を登録し、ランダムな順番で、スタチンを1カ月服用する期間、プラセボを1カ月服用する期間、1カ月間治療なしの期間に割り付けて、有害事象の強さを比較しました。スタチンとプラセボは、見た目では区別できない状態(盲検状態)になっていました。

 その結果、治療なしの期間に比べ、スタチンの服用期間とプラセボの服用期間には有害事象の報告が有意に多いこと、また、スタチン服用期間とプラセボ服用期間を比べると、有害事象の出現リスクに差はないことがわかりました。ノセボ効果と考えられるこの結果を主治医が患者に伝えたところ、試験終了から6カ月の時点で、半数の患者がスタチンの服用を再開できていたそうです。

 続いて、プラセボ効果について報告している論文(*4)を1本紹介します。こちらは、関節リウマチの患者を対象とする5件の臨床試験でプラセボに割り付けられた患者のデータを集めて分析したところ、プラセボ使用中の患者に炎症の軽減が見られた、という報告です。

 米国の研究者たちは、プラセボ群だった788人の患者を対象に、プラセボ投与開始時点から12週後まで、または24週後までの痛みの程度と、炎症のマーカーであるCRP(C反応性タンパク質)値、および赤血球沈降速度の変化を調べました。その結果、12週後、24週後の両方で、治療開始前に比べ、患者が訴える痛みの強さも、CRP値も、赤血球沈降速度も、すべて有意に改善していたことが明らかになりました。

 実際に投与されていたのはプラセボだったにもかかわらず、効果を期待する気持ちが、関節リウマチによる炎症をも抑制したことになります。

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