新型コロナワクチンの接種前に知っておきたい「ノセボ効果」とは
気にかかる情報、間違った思い込み、悲観的な予測などが体にも影響
大西淳子=医学ジャーナリスト
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が続いています。おかげで、これまで一般の人々の口に上ることは全くなかった専門的な用語が、一般メディアでもそのまま伝えられるようになってきました。「PCR検査」をはじめとして、「市中感染」、「エビデンス」、「査読前論文」などといった用語の広まり方には驚くばかりです。先日、新型コロナワクチンの臨床試験で、プラセボ群の多くに有害事象が見られた、とSNSで話題になったのも、パンデミック前には考えられなかったことです。
プラセボ群にも少なからぬ有害事象が見られた、という新型コロナワクチンは、既に先進国で接種が始まっており、日本でも接種開始に向けて準備が進められています。ワクチンの効果や安全性に関する情報を正しく吟味するためには、使われている用語の意味を知ることが大切です。この記事では、ワクチン関連の記事で目にすることの多い「副反応」「副作用」「有害事象」といった言葉の意味と違い、そして「プラセボ効果」と「ノセボ効果」について解説していきます。

ワクチン接種後に現れる症状は「副作用」ではなく「副反応」
最初に、副反応と副作用の違いを簡単に解説します(*1)。副反応は、ワクチンの接種後に、目的とする免疫を獲得する反応以外に現れる症状(注射部位の腫れや発熱など)を言います。副作用は、治療薬を投与された人に現れる、治療効果以外の作用(血液検査値の異常や下痢など)を言います。
副反応と副作用のほかに、有害事象という言葉も臨床試験ではよく用いられます。有害事象は、治療薬やワクチンを投与された人々に発生する、薬やワクチンに関係する体調の変化と、それらとは無関係の健康上の問題の両方が含まれます。後者の例としては、別の病気によって生じた痛みや症状から始まって、自転車に乗っていて交通事故に遭った、といったものまで報告されます。幅広く情報を収集することにより、想定されていなかった副反応や副作用を発見できる可能性があるからです。
例えば、自転車に乗っていて事故に遭った背景には、服用した治療薬が引き起こしためまいや視力障害があるかもしれません。有害事象報告の収集と分析は、薬やワクチンの安全性を高めて、健康被害を防ぐために役立ちます。
副反応
ワクチンを接種した人に現れる、目的とする免疫を獲得する反応以外の症状(注射部位の腫れや発熱など)
副作用
治療薬を投与された人に現れる、治療効果以外の作用(血液検査値の異常や下痢など)
有害事象
治療薬やワクチンを投与された人に発生する、薬やワクチンに関係する体調の変化と、それらとは無関係の健康上の問題(交通事故なども含む)
