市販薬を多く扱う薬局やドラッグストアの棚を見ると、同じブランドの商品が複数並んでいることが少なくありません。外箱を見ると、配合成分は同じなのに、「軟膏」「クリーム」「ローション」など、薬の形状(剤形)が違う…。どのように商品を選び、使い分ければよいのでしょうか。
皮膚のトラブルを解消するために、使用する市販の塗り薬(外用薬)。「あの薬は傷に染みる」「この薬はベタベタする」など、使い勝手に違いがあることになんとなく気付いているのではないでしょうか。
今回は、主な外用薬の特徴と使い方について解説していきましょう。
軟膏は「保湿力の高さ」、クリームは「伸びの良さ」が特徴

軟膏は、白色ワセリンをベースとする外用薬です。ワセリンは石油を精製する過程でできる鎖状飽和炭化水素(CnH2n2、n=16~20)で、脂溶性(*1)の物質です。刺激が少なく、口の中や目の粘膜に使う薬にも用いられています。半透明でベタベタしていますが、保湿力が高いのが特徴です。
クリームは、白色ワセリンなどの脂溶性物質のほか、水やグリセリン(多価アルコール)といった親水性(*2)物質もベースとなっています。「水と油」を含むため、ドレッシングのように分離しないように界面活性剤(乳化剤)が添加されています。また、親水性物質は微生物を繁殖させやすいため、防腐剤(保存剤)が多くの製品で添加されています。軟膏に比べてなめらかで伸びが良く、水で洗い流せるのが特徴です。
ローション(液状の外用薬)は、水やグリセリンといった親水性の物質がベースとなっています。有効成分が角質層に移行しやすいため即効性に優れる一方で、体温で基剤が蒸散しやすく、持続時間が短いという欠点があります。クリームと同様に、防腐剤(保存剤)がよく添加されています。
*1 脂溶性とは、油との親和性が高いこと。水との親和性が低い。疎水性、親油性ともいう。
*2 親水性とは、水との親和性が高いこと。油との親和性が低い。水溶性ともいう。