梅雨の時期から夏にかけて、皮膚のトラブルが増えていきます。中でも「足の裏がかゆい」「足の指の間がジクジクしている」などの症状に気付くと、頭の片隅に「水虫かも…」と疑念がよぎるのではないでしょうか。今回は、水虫を治療する市販薬について解説しましょう。
水虫とは?

人間の皮膚には数多くの微生物が住み着いています。皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)というカビ(真菌)の一種は、表皮の角質に侵入し、ケラチンというタンパク質を栄養源として増殖します。水虫は皮膚糸状菌の一部(白癬菌と呼ばれます)が皮膚に寄生することで起こる感染症です。水虫というのは俗称で、正式には足に感染した場合は「足白癬」、爪に感染した場合は「爪白癬」といいます。
足白癬は、(1)足の指の間の皮が剥けたり、白くふやけたりする「趾間(しかん)型」(2)足の裏に小さな水膨れが生じ、それが破れると皮が剥ける「小水疱型(汗疱型)」(3)かかとの皮膚が厚くなり、ヒビ、アカギレのように足の裏全体が硬くなる「角質増殖型(角化型)」の3つに分けられます。水虫といえば、かゆみが強いと連想される方が多くいますが、半数以上はかゆみを伴わないことが分かっています。
角質層に寄生した白癬菌は、温度が15℃以上、湿度が70%以上で活発に増殖します。そのため、6月~8月にかけて水虫の患者さんが増加します。これからの季節に症状が強くなり、秋から冬にかけて症状がおさまるのが特徴です。
市販の水虫薬は外用薬がメーンです。医療用医薬品から転用された成分が多く、皮膚に入りこんだ白癬菌を殺すことで、水虫を改善させます。薬を使っていても効果が実感できない水虫、患部が広い場合、「爪白癬」を伴う場合は市販薬では対処できないので、医療機関を受診するようにしましょう。
1.こんな場合はすぐに受診
市販の水虫薬の使用が適さない水虫がありますので、次の症状がある場合は市販薬を使用する前に皮膚科を受診するようにしてください。
- 患部が広範囲であったり、水疱が破れた後のただれがひどい
- 爪が濁って黒ずんでいたり、「爪水虫(爪白癬)」と診断されたことがある
- 糖尿病治療薬や免疫抑制剤を服用している
症状がひどい場合、また、細菌などによる二次感染が疑われる場合には、皮膚科医の専門的な治療が必要になります。ただれが強くなってしまった水虫では、かえって薬を塗ること自体が刺激となり、症状を悪化させる可能性が考えられるため、注意が必要です。皮膚科ではまずただれの状態を良くしてから、抗真菌薬が処方されます。
また、爪白癬では、抗真菌薬の内服による治療が必要になります。外用の水虫薬は爪に浸透しにくい上、効能・効果に爪白癬を含む市販薬はありません。
糖尿病や免疫抑制剤を服用している方は、感染症に対する免疫力が落ちているので水虫にかかりやすくなります。水虫が疑われる場合には、自己判断するのではなく、まず主治医に相談しましょう。