添付文書や外箱の用法・用量の欄を見ると、「1日3回」「1日2回」などと飲む回数が決められているものがあります。例えば、同じアレルギーの薬でも、1日1回飲めばいいものがあれば、1日3回きちんと飲まなければいけないものがあります。なぜ、薬によって飲む回数が違うのでしょう?

前回(「薬はなぜ「食後」に飲むものが多いの?」)は、薬を飲むタイミングと食事の関係について解説しました。例えば、食後に飲むよう決められている薬は、胃の中で食べ物と混ざることで胃腸への刺激を抑えられるよう考えられています。
薬を飲むタイミングは「食後」「食前」などのほかに、「1日1回」「1日3回」などと回数が定められているものが多くあります。今回はその理由について解説します。
有効成分の血中濃度を一定に保つ
口から飲んだ薬は、食道・胃を通過して主に腸で吸収されます。腸で吸収された成分は、血液に乗って肝臓へ運ばれ、分解または解毒(代謝)されて全身に行きわたります。薬の成分は何度も体の中をめぐりながら、やがて尿や便として体の外に排出されます。飲んだ直後は、体内に多量に存在していた薬の成分も、時間が経つにつれ減っていきます。
薬の効果は、血液中の薬の濃度(血中濃度)と相関しています。ある一定の血中濃度以上になると効き目が現れますが、一定濃度を下回ってしまうと、十分現れなくなってしまいます。効き目を維持するために、血中濃度が下がってゆくタイミングを見計らって、薬を再び飲まないといけないのです。
薬によって体内に滞在している時間が異なるため、飲んでから4〜8時間くらいで効果が下がってしまう薬は1日3〜4回飲む必要あり、24時間効いている薬なら1日1回でいいということになります。ちなみに、「1日1回」と定められた薬は、飲む時間帯を決めて服用間隔がだいたい24時間空くようにしましょう。就寝前に薬を飲んだ後、日をまたいだからといって、翌朝に飲んでしまうと、血中濃度が上がり副作用や中毒症状を引き起こす危険性が高まります。
長く効く薬は噛み砕いてはいけない
利便性を考えると、1日1回の服用の方が「ラクで良い」と思うかも知れません。しかし、薬には副作用があります。体内に長く留まる薬の場合は、主作用だけでなく、副作用も長く続く可能性もあり、必ずしも服用回数が少ない薬の方が良いとはいえません。
とはいえ、何度も薬を飲むのが面倒な人や、薬を飲むのをよく忘れてしまう人にとっては、服用回数が少ない薬を選んだ方が便利なのは確かです。近年は、有効成分が少しずつ溶け出すようカプセルや顆粒にコーティングをほどこすことによって、飲む回数を少なくした薬が多く発売されています。
このような薬を徐放性薬剤と呼んでいます。徐放性薬剤を飲む場合は、口の中で噛んで砕いたりしてはいけません。コーティングが壊れて血中濃度が急激に上がり、副作用が出てしまう可能性があるからです。
市販薬の飲み方について、困ったことやわからないことがありましたら、薬剤師や登録販売者に相談してください。
