日経グッデイ

薬剤師直伝! 市販薬の選び方・使い方

タバコを止めたい、禁煙補助薬はどう選ぶ?

口さみしい人はガム剤、気付かれたくない人はパッチ剤を

 若林 進=一般社団法人日本医薬品情報学会 OTC情報委員会委員

タバコは「百害あって一利なし」といわれますが、喫煙が長年の習慣になっている人は、自分の意志だけで禁煙しようとするのは難しいかもしれません。医療機関では禁煙外来が登場する一方、市販薬にも禁煙をサポートする薬があります。今回は「禁煙補助薬」について説明しましょう。

(イラスト:宇田川新聞)

 喫煙の年数が長くなると、脳の神経伝達系が変化し、ニコチンなしではイライラや集中力の低下といた離脱症状(禁断症状)が現れるようになります。こうしたニコチン依存状態の人たちでは、血液中のニコチン濃度が下がることで、胃腸の不調やめまいといった症状が現れることもわかってきています。

 市販の禁煙補助薬は、タバコが関係する作用の中でも、特にニコチン依存に着目し、段階的に禁煙に導いていくものです。2008年に医療機関で処方されているニコチンパッチが市販薬としても販売されるようになりました。体内のニコチンが欠乏することで起こる離脱症状を、ニコチンの補充によって軽減させ、徐々にニコチンの量を減らしていきます。この方法は医療機関でも行われていて、ニコチン置換療法とも呼ばれています。

1.こんな場合はすぐに受診

 市販のニコチン製剤で禁煙することは健康のために素晴らしいことですが、受診して専門医の指導の下、禁煙に取り組むほうがよい人もいます。

  • 喫煙本数が1日20本を超える人
  • 心臓病(狭心症、不整脈など)の人
  • うつ病の人
  • 妊娠中の人(*)
  •  
    * 医療用の禁煙補助薬には妊娠中の人でも使えるものがあります。

    2. 症状のタイプと合う成分

     市販の禁煙補助薬には、ニコチンパッチ(貼付剤)とニコチンガム(ガム剤)の2種類があります。いずれも主成分はニコチンです。貼付剤かガム剤かは、使用する状況を考慮して選びましょう

    貼付剤が適する人

     ガムが苦手だったり、就業時間内にガムを噛むのが難しい場合、誰にも気付かれずに禁煙したい人は、貼付剤が適しています。市販の貼付剤は、就寝中の副作用(不眠など)を防止するため、起床後に貼り、就寝前にはがします。

    ガム剤が適する人

     一方、ガム剤は、口寂しさからついタバコを吸ってしまう人や、「目覚めの一服」や「飲酒後の一服」などが習慣となっている人に向いています。通常、1日当たり4~12個から始めて、24個を超えてはいけません。禁煙に慣れてきたら(1カ月前後)、1週間ごとに1日の使用個数を1~2個ずつ減らしていき、1日の使用個数が1~2個となった段階で使用を止めます。

    表1◎ 市販の禁煙補助薬に含まれる成分の特徴と注意点
    種類成分 特徴や注意点製品例
    ニコチンパッチニコチンニコチンを皮膚から吸収させる
    1日1枚皮膚に貼り、徐々にニコチンの含有量が少ないものに切り替えていく
    貼る場所は上腕部、腹部あるいは腰背部
    毎日場所を変えて貼る
    医療用医薬品もある
    ニコレットパッチ
    ニコチネルパッチ
    シガノンCQ透明パッチ
    ニコチンガム製剤ニコチンニコチンを口の中の粘膜から吸収させる
    タバコを吸いたいと思ったとき、1回1個を30~60分間かけてかむ
    使用期間は3カ月をめどとする
    ニコレット
    ニコチネル

    3.使用上の注意

    禁煙補助薬を使う人は喫煙NG

     タバコを吸わない人や妊婦、妊娠していると思われる人、授乳中の人、重い心臓病を有する人、急性期脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)と医師に診断された人、うつ病と診断されたことのある人は禁煙補助薬を使ってはいけません。また、禁煙補助薬を使っている間や直後は、血液中のニコチン濃度が高くなるので、他のニコチン製剤を使ったり、タバコを吸ってはいけません。

    使用期間の目安

     禁煙補助薬は漫然と使用せず、各商品が定める使用期間を守りましょう。ちなみに目安は、貼付剤では8週間、ガム剤は3カ月です。

    貼付剤の使い方

     貼付剤は、二の腕やお腹、背中から腰の辺りに、毎日場所を変えて貼ります。そのとき、湿疹やかぶれ、傷口がないか確認してください。貼り直す際には、前に貼っていた古いものをはがし忘れないように注意しましょう。万が一、貼り替える前に貼付剤がはがれてしまった場合は、サージカルテープなどで固定して使い直しても構いません。

     また、貼付剤は貼ってある部分の皮膚が温まると、ニコチンの吸収量が増えることが確かめられています。貼付剤の使用中は、サウナや長湯、激しい運動は控えるのが望ましいのですが、サウナなどの前にはがせば問題ありません。 シャワー程度でしたら貼ったままでもよいとされています。

    ガム剤では副作用に注意

     ガム剤の使用後、口の中やのどの刺激感、舌の荒れ、味覚の異常、唾液増加、歯肉炎、あごの痛み、しゃっくり、げっぷなどの症状が現れることが報告されています。このような症状が続いたり、強まったりする場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

    医療用医薬品の禁煙補助薬との違いは?

     禁煙補助薬は、市販薬のほかに、医療機関を受診して処方してもらう医療用医薬品があります。

     医療用医薬品は、ニコチンパッチとバレニクリン酒石酸塩(商品名チャンピックス)の飲み薬の2種類。

     ニコチンパッチは市販薬と同じものですが、使い方に少し違いあります。また、うつ病の人は市販薬を使用してはいけません。

     バレニクリン酒石酸塩は、脳内でニコチンと似た作用を示し、タバコに対する欲求を軽減します。喫煙による満足感を抑制し、「タバコを吸いたい」という気持ちを鎮めます。

    4.購入時、薬剤師(登録販売者)からよく確認されること

     市販の禁煙補助薬を購入する際に、薬剤師や登録販売者から次のようなことを尋ねられることがあります。

    • 喫煙していますか
    • 妊娠中もしくは授乳中ですか
    • 心臓の病気はありませんか
    • ほかに何か薬を使用していますか
    一般社団法人日本医薬品情報学会 (JASDI)
    一般社団法人日本医薬品情報学会 OTC情報委員会 本会は、薬剤師が中心となって医薬品情報学に関する教育や研究を行うことで、薬学・医学・医療の進歩向上、国民の健康に貢献することを目的として活動しています。本会のメンバーは病院や街の薬局で働く薬剤師、薬学系大学教員、製薬や医薬品流通関連企業、薬事関連行政担当者などです。主な活動として、学会機関誌JJDIの発行、学術大会・学術フォーラムの開催、一般向けの公開講座、医薬品情報学に関する教育・研究の支援、専門薬剤師の認定などを行っています。ホームページはこちらから。