腐りやすい食品は冷蔵庫で保管しなければ、食べられる期間が短くなってしまいます。では市販薬はどうでしょうか。今回は保管方法について詳しく解説します。
「冷暗所」は「冷蔵庫の中」ではない

市販薬は一般に「冷暗所」に保管するようにいわれていますが、冷暗所は“冷蔵庫の中”を意味しているのではありません。ところが食べ物と同様に、冷蔵庫で保管すれば市販薬も長持ちすると考える人は少なくないようです。
確かに市販薬の配合成分は化学物質なので、温度の低い環境では酸化などの化学反応が進まず、劣化しにくくなります。
一方で、冷蔵庫に入れて中身の薬が冷たくなってしまうと、使う時に外気との温度差が大きくなり、結露しやすくなるという問題が生じます。薬の表面が湿気を帯びると、ベタベタしたり、固まったりして飲みにくくなってしまいます。
では正しい保管の方法とはどのようなものなのでしょうか。
保管の基本は室温で乾燥した直射日光が当たらない場所
薬は高温・高湿・光によって変質してしまうので、保管の基本は、温度が低く・乾燥した・直射日光が当たらない場所(=冷暗所)にしまうことです。具体的には以下のようなことがポイントになります。
15~25℃を保つ
市販薬の保管は、室温が適しています。日本薬局方では、室温は1~30℃と定めていますが、冷蔵庫内(約4℃)に入れると前述のような不都合が生じてしまうため、私たちが快適に生活できる部屋の温度(15~25℃)で保管すれば問題ありません。
密閉&乾燥剤で湿気を寄せ付けない
一度開封してしまった薬は、容器のふたや栓をしっかり閉めてからしまうことが大切です。湿気を帯びやすい薬には、メーカーが出荷時に乾燥剤(シリカゲルなど)を封入しています。この乾燥剤は薬を使い切るまで捨ててはいけません。ただし、シリカゲル本体を薬と間違えて飲まないように気をつけてください。
ちなみに、お菓子や海苔の保管で用いられる乾燥剤として生石灰(酸化カルシウム)がありますが、これは乾燥させる力が強いため、市販薬の保管には向きません。例えば錠剤は乾燥し過ぎると、ひびが入ったり、割れてしまうことがあります。適度な湿度を保ちつつ、結露による劣化を防ぐにはシリカゲルが適当です。
缶や箱で光を遮る
直射日光を避けるために、救急箱や缶に入れてしっかりふたを閉めてしまうのもおすすめです。目薬のように、光によって有効成分が分解されてしまうものの場合は、遮光袋に入っています。使う時だけ袋から出します。
室内で保管場所に向かないのは、湿度が高くなりやすい洗面所や台所などです。また、暖房器具やコンロといった熱を発する器具の近くも避けるようにしましょう。
そのほか、保管について次の2つについても注意してください。
子どもの手が届かない所に
子どもは、大人の真似をして、誤って薬を飲んでしまったりすることがあります。また、用法・用量を正しく判断できません。そのため、子どもが誤って市販薬を飲んでしまうケースが後を絶ちません。小さな子どもがいる家庭では特に、子どもが簡単に触れられる場所に薬を保管しないように気をつけましょう。
別の容器に入れ替えない
薬と容器が対応しなくなることで、飲み方を誤ってしまう可能性が高まります。小分けにして持ち歩く場合には、その日の分だけにとどめ、湿気や汚れなどには十分注意してください。
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