日経グッデイ

COML患者塾

高齢者向け住宅・施設いろいろ…何が違うの?

【話題提供】上農 哲朗さん (ドクター・おおむち診療所管理者)

 NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)

 「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「有料老人ホーム」など高齢者向けの施設について、名称を聞いたことがあっても、それぞれの違いや特色まで理解されている方は少ないかもしれません。
 そこで今回はCOMLの理事でもあり、おもに訪問診療に従事されているドクター・上農哲朗さんにそれぞれの施設や住居について詳しくお話しいただきました。(本記事はCOMLの会報誌2014年8月号からの転載です)

高齢者向け住宅がなぜ注目されてきたか

  高齢者人口が増えるなか、子どもがいなかったり離れて暮らしていたりして高齢者の独居や夫婦だけの世帯も増えてきました。独居や老々世帯の場合、介護が必要になったとき、自宅で過ごし続けることが難しくなってきます。

  だからと言って、病院や介護保険施設に入院・入所できるのかというと、現状ではそれも難しいのです。国が在宅療養を勧めるべく、長期入院や介護保険施設数の抑制をするなど政策誘導をしているからです。またその一方で、「サービス付き高齢者向け住宅(いわゆるサ高住)」の供給を促進して「在宅」の数を増やそうと、サ高住の運営者に対し税制や融資などで数々の優遇をおこなっています。

上農 哲朗さん(ドクター・ おおむち診療所管理者)

 なお、「サ高住」は厚生労働省と国土交通省の管轄であり、2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」が改正されたことによって、「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」が廃止され「サ高住」に一本化されました。「サ高住」では、「高齢者向けの賃貸住宅又は有料老人ホームであって居住の用に供する専用部分を有するものに高齢者を入居させ、状況把握サービス、生活相談サービスその他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供する事業」がおこなわれることになっています。つまり、見守りサービスが絶対的要件であって、基本的には介護サービスがないことに注意しなければいけません。

高齢者のための施設、住居

  では、サ高住を含め、高齢者のための施設や住居にどのようなものがあるか見ていきましょう。まず、介護保険法に規定されている施設に、「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」があります。ややこしいのですが、「介護老人福祉施設」は老人福祉法で言うところの「特別養護老人ホーム」のことです。また、かつての介護保険法で規定されていて、2018年3月末までに廃止されることになっている「介護療養型医療施設」もあります。この2つに介護老人保健施設を加えた3つの施設は、要介護者(介護保険認定審査会において要介護と判定された人)でなければ入所できません。

  「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」は「要介護者に対し、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行う」施設ですが、介護保険で安く利用でき、かつある程度の質も保証されているので、多くの要介護者が入所を希望されます。そのため待機数が非常に多いのが現状です。ただ、医師が常駐しているわけではなく、看護師も夜勤はいなくて構わないことになっているので、医療的な部分は期待しないほうがいいかもしれません。

  「介護老人保健施設」は「要介護者に対し、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行う」施設で、100床につき常勤の医師が1人いなければなりません。夜勤の看護師もいます。ただし、「介護老人保健施設」はずっと入所できる施設ではなく、在宅復帰を目指すための“中間施設”という位置づけなので、3カ月に1回、このまま入所を続けるか退所してもらうかの見直しがあります。

 つぎに上記の「特別養護老人ホーム」以外で、老人福祉法で規定されていて、高齢者が生活できる施設に「養護老人ホーム」と「軽費老人ホーム」があります。「軽費老人ホーム」には「A型」「B型」「ケアハウス」の3種類がありましたが、現在「ケアハウス」への一本化が進んでいます。また、老人福祉法において「老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であって厚生労働省令で定めるものの供与をする事業を行う施設」で「老人福祉施設でないもの」と規定されているのが、「有料老人ホーム」です。これらの施設はとくに要介護者を対象にしているわけではありません。しかし経済面、環境面など入居の条件がそれぞれにあるので注意が必要です。

  前出の「サービス付き高齢者住宅」を含め、「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム(ケアハウス)」「有料老人ホーム」のなかで『特定施設』の指定を都道府県から受けている施設では、入居者に介護が必要になったとき、介護保険のなかの特定施設入居者生活介護を利用することができます。つまりこの4つの施設では『特定施設』の指定がない限り、通常、介護が必要になったときに施設そのものに介護サービスは付いていないため、自宅で生活しているのと同様、自分で介護保険サービスの契約を外部の事業所と結ばなければなりません。なお、『特定施設』の指定を受けている施設は「ケア付き」「介護付き」等の表示が許されています(例:ケア付き有料老人ホーム)。

施設選びにあたって

施設を選ぶ際には、建物やインテリアなど目先の豪華さに惑わされないようにしたい。(© xy - Fotolia.com)

  医療機関や介護事業所であれば、それぞれ監督機関があります。しかし、高齢者向けを謳っている施設のなかにはどこの監督も受けず、未届けで運営されている施設もあります。法に則っているか、都道府県に届け出ているか、まず確認してください。

  また、見学に行くことは大切ですが、その際、建物やインテリアなど目先の豪華さに惑わされないこと。そしてこの先、必ず心身の機能が低下していくことを念頭に施設を選ぶこと。つまりその施設に入居してから介護や医療が必要になったとき、どのようにケアを受けられるのかも調べておく必要があります。

  ほかにも経営者や責任者をはじめとしたスタッフも、ずっと同じではありません。「この人(スタッフ)がいるなら」と思って決めても、どこかほかの施設に移ったり辞めてしまったりすることもあります。特定の人の印象だけで施設を選ぶことはやめておいた方がいいかもしれません。

  高齢者向けの施設や住居ではいろいろな問題が起き、報道されることも多々あります。自分の人生がかかっていることなので、施設についてどんなに調べても、それで十分ということはないと思います。元気なうちから情報を集めて知っておいてほしいと思います。 

(2014年7月5日開催/まとめ:三好菜々)

グループディスカッション

Aさん 父をずっと自宅で介護していたのですが、最期を迎えたときは病院に入院しました。病院では延命治療をされることも少なくないと思うのですが、施設で自然に最期を迎えることは可能なのでしょうか?

上農さん このタイプの施設であれば看取りをしてくれる、という答えはありません。施設にもよるし、同じ施設内でも看取りをするフロアと看取りをしないフロアが混在している場合もあります。また、スタッフや経営者がかわれば、方針がかわることもあります。ただ、看取りまでしてくれる施設はなかなかないように思います。やはり急変時は病院に搬送することが多いでしょう。

Bさん どのように施設を選んで、どのように申し込みをするのかを知らないので、まだどこにもアプローチできないでいます。何か良い方法はありますか?

Cさん 私は76 歳ですが、子どもがおらず、賃貸マンションに80歳の夫と住んでいます。いまは二人とも元気で介護も必要ないのですが、今後のことを考えてずっと施設を探しています。多くの施設に見学に行きましたが、「この施設は良いな」と思うところは費用が高いように感じます。私は新聞に広告が載っていたら電話をしてみて見学可能かどうか尋ねたりしていますよ。たくさん見ることが大切だと思います。

上農さん サービス付き高齢者向け住宅協会全国有料老人ホーム協会全国介護老人保健施設協会全国老人福祉施設協議会など団体のホームページに情報や見学案内も載っているので、ぜひ見てみてください。

Cさん 施設の見学に行くこともそうですが、上農さんのおっしゃる通り、積極的に情報を集めて勉強しておいて損はないと思います。受け身でいても必要な情報は入ってきません。私たち夫婦は情報を集め、話し合って、いまではどちらかの身に何かあったときに相手が困らないように、公正証書を作成したり遺言を残したり、任意後見契約も第三者と結んでいます。

「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者が自立・成熟し、主体的に医療に参加することを目指して1990年に設立。患者と医療者が対立するのではなく、“協働”する医療の実現を目的としている。患者の悩みに対する電話相談、各種セミナー・講座などに積極的に取り組んでいる。