日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > 医療・予防  > COML患者塾  > 「訪問看護」を知ろう  > 2ページ目
印刷

COML患者塾

「訪問看護」を知ろう

【話題提供】錦織 法子さん(訪問看護ステーションゆいか管理者・看護師)

 NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)

経営難で閉鎖する訪問看護ステーションは減ったが、なかなか増えていかないのが現状。(©goodluz /123RF.com)

 こうした現状に対し、訪問看護の事業者団体からも、訪問看護は医療保険のサービスとして介護保険制度の給付限度額の枠の外で利用できるようにしてほしい、と働きかけをおこなってはいます。しかし、訪問看護のシェアが拡大しない背景には、看護側の問題もあります。

 訪問看護は、看護師が所属する病院やクリニック(診療所)に通院する患者さんに提供される医療機関からのものと、医療機関に所属しないフリーの看護師が集まった訪問看護ステーションから提供されるものがあります(ただし、訪問看護ステーションからのサービスを受けるには、かかりつけ医や病院からの訪問看護指示書の交付が必要です)。

 医療機関からの訪問看護は時間が限定され、どちらかというと診療補助的なものが多いですが、訪問看護ステーションからの訪問看護は基本的に24時間連絡がとれる体制で、ひとつのステーションに勤める訪問看護師の数も多くないのでボランティア精神がないとなかなか務まりません。開業するにあたっては、3人以上の看護師確保が絶対条件ですし、給料をきちんと払っていくためにはボランティアとばかりは言っておられず、経営も考え営業もしなければなりません。

 最近はステーション同士が連携をとることも増え、経営難で閉鎖する事業所は減りましたが、なかなか増えていかない現状です。

そもそも看護とは

 訪問看護は在宅“医療”の枠組みのなかで語られることが多いのですが、本来看護の役割とは医療を使って患者さんを支援することではありません。確かに看護師は医師の指示に基づいて医療行為をおこなうこともできますが、療養上の世話(ケア)である「看護」をおこなう専門職なのです。

 ナイチンゲールは著書「看護覚え書」のなかで、病気は生体の回復作用であると述べているのですが、私は「看護は、この『回復作用』を妨げる原因を取り除けるよう、あらゆる環境を整備することで回復を促すことであり、さらに、これを患者自身でできるようになる過程を、さまざまな技術や資源を使って支援することである」と解釈しています。

 たとえば、私たち訪問看護師がご自宅に伺い患者(利用者)さんの床ずれをみれば、ご家族がどういう介護方法をとっているのか、どこに圧がかかっているから生じたのかがわかります。そして患者さんの生活状況を見て、正しい介護方法をお伝えすることで床ずれを治し、予防することができます。もし、皮膚科を受診して一時的に傷が癒えても、生活の場を見ないままでは根本的な解決にはなりません。

 ただ医師の指示を受けて動くだけでなく、患者さんの生活をみて、ご本人やご家族が安全・安心に生活できる環境を一緒に考え整えながら、一方で医療依存度を下げていく、それが訪問看護の役割なのではないかと思います。しかし、すべての訪問看護師や訪問看護ステーションがこのような考えで活動しているわけではないため、なかなか訪問看護の重要性が伝わらず、結果的にシェアが拡大していかないのです。

 私は漢字の“命”は生命そのもの、ひらがなの“いのち” は生活や人生、その人らしさを意味するものとして2つの表記を使いわけているのですが、介護とは“いのち”のバトンリレーの時間だと思っています。「私はしあわせだ」と言って旅立った姿が家族のこころに温かい思い出として染みわたるように記憶されていく、その記憶が残された家族のこころのなかに人生の温かい灯となって生き続ける、それが本来の介護の意味合いではないかと思うのです。

 だから、訪問看護師が家族のもとに届ける医療は、 “介護(バトンリレー)をしやすくするための手段としての医療”でなければなりません。決して単に医療を届けることが役割ではないはずです。

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 第3波を乗り切るためのコロナ対策

    新型コロナウイルスの新規感染者が再び急増し、日本は今、流行の第3波を迎えている。今後さらに気温と湿度が下がると、ウイルスの生存により適した条件が整うようになる。これ以上の流行拡大を防ぐためには、1人1人が感染予防策を改めて見直し、感染リスクの高い行動を避けて生活することが不可欠だ。第3波を乗り切るためのコロナ対策を、もう一度まとめた。

  • 寝たきり予備軍「フレイル」を防ぐためにできること

    老化を防ぎ、健康寿命を延ばすためには、加齢により心身が衰えた状態である「フレイル」の予防が必要になる。フレイルは、健康な状態と要介護状態の中間に当たるが、これを避けるために特に重要なのが「筋肉量の維持」だ。筋肉量が減少すると、足腰が弱くなって寝たきりにつながるだけでなく、認知症や心疾患のリスクが上がることも分かってきた。筋肉量を維持し、フレイルを防ぐために何をすればよいだろうか。

  • 「ウォーキング」「ジョギング」 大きな健康効果を得るための小さなコツ

    ウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」には、「コロナ太り」の解消や、生活習慣病の予防、免疫力アップなどが期待できる。ただし、漫然と歩くだけでは運動効果は低いし、かといって本格的なジョギングは運動初心者にはハードルが高い。そこで運動効果の上がる歩き方と、初心者でもできる走り方のコツを紹介する。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2020 Nikkei Inc. All rights reserved.