2010 年4月以来、医療機関や保険薬局では、正当な理由がない限り原則として医療費の明細書 の発行が義務づけられています。請求されている具体的な点数の項目を目にする機会が増えたため か、COMLに寄せられる医療費の相談は増え、全体の15%にのぼっています。そこで、今回の患者塾では、医療費の領収書、明細書に関心を持ち、読み解くための基本的知識 を知ってもらおうと企画しました。とくに基本料金や慢性疾患で請求される内容などを中心に情報 提供をしましたので、そのポイントをご紹介します。(本記事はCOML会報誌2015年4月号からの転載です)
基本的なしくみ

保険診療を受けた場合の診療報酬は、医科・歯科・調剤に分かれて点数が定められています。1点=10円で計算され、1割や3割といった負担を患者が支払うシステムです。
基本的に、医療費は“出来高払い”と言って、「基本料」+「管理料」+「検査料」+「投薬」……といった具合に、おこなわれた診療内容で請求可能なものを足し算していく方式で計算されます。ただ最近は“包括化”と言って、たとえばある管理料のなかに検査や薬の費用が含まれている―という点数も増えてきています。
とくに、“DPC対象病院”では、病気の診断群ごとに包括化された点数と請求の期間が決められ、入院料の請求がおこなわれます(手術・麻酔・放射線治療・リハビリテーションなどは包括外)。同じ診断群であれば、点滴の本数や検査の種類が多くても少なくても、点数は同じというしくみです。ただ、病院の機能によって係数が設定されているため、“包括化”といっても仕組みは単純ではありません。
受診した際の基本料金
医療機関や薬局を利用するときは、必ず基本料金が必要になります。診療所や病院を初めて受診する際の基本料金は“初診料”で、現在いずれも282 点と定められています。
ただ、2014年の診療報酬改定で、大規模の病院では紹介率(初診患者のうち紹介状を持参している割合)や逆紹介率(大規模の病院から地域の診療所や病院に紹介した割合)が低いと、209 点しか請求できないという点数が定められました。これは、日頃はかかりつけ医に診てもらい、大規模の病院での診療が必要になれば紹介してもらって、一定期間、専門的・集中的な治療を受ける。そして、状態が落ち着いたらかかりつけ医に戻ってもらう、ということをさらに奨励するためです。
同じ疾患で2回目以降に受診する際は、診療所と200床未満の病院は“再診料” 72 点、200床以上の病院は簡単な検査や処置込みの点数で“外来診療料” 73点が基本料金となります。一方、保険薬局は初めてや2回目以降に関係なく、基本料金は調剤基本料として定められていて、処方せんの受付回数や特定の医療機関からの処方せんが占める割合によって、41 点と25 点という2つに分けられています。
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