日経グッデイ

あの検査、受けてみました

私は世界的なマラソン選手になれたらしい

遺伝子検査、受けてみました【その3】

 まんだ ももゆき=医療ライター

遺伝子データ、ダウンロードできず

写真1◎ ジーンクエストのマイページのトップ画面
[画像のクリックで拡大表示]

 マイコードから遅れること3週間、ジーンクエストからも「遺伝子解析完了」のメールが届いた。またちょっとドキドキしてみるか、と結果をのぞいてみたら、それはそれでとても興味深い結果だった(私が、2社の遺伝子検査を受けることになった経緯は「私は85歳までは生きないらしい」「私はいったい何の病気で死ぬのだろう?」をご参照ください)。

 ジーンクエストのマイページのトップが写真1だ。「健康リスク」「体質」はマイコードと同じだが、「薬物反応」「祖先解析」「ダウンロード」などマイコードにはないメニューも。ただし、体が薬剤を代謝しやすいかどうかの個人差である「薬物反応」の情報提供と、遺伝子情報のデータの「ダウンロード」サービスはまだ始まっていない。

 それぞれをクリックすると、薬剤反応については「薬剤の選択などについて、個人の誤った判断を招く可能性による弊害を考慮すると、倫理的に問題であると懸念されているため」、ダウンロードは「現在の技術ではジェノタイピングのエラー率が数%あることを踏まえると、倫理的に問題であるのではという議論がなされているため」との説明が表示されるだけだ。わざわざメニューを用意しているのに、なんだか煮え切らない対応だ。ちなみに、解析した遺伝子の生データを教えてくれる会社は、日本にはまだない(米国では、以前は23and Me社でダウンロードが可能だったが、重篤な遺伝病に関するSNPも含まれていたため、アメリカ食品医薬品局(FDA)が警告を発し、昨年12月から停止中)。

「95歳まで生きる可能性は"一般的"」と言われても・・・

 今回は疾患のリスクは後回しにして、ジーンクエストの売りとも言える、項目が多い「体質」から見ていくことにしよう。

 「体質」は「体の特徴」(49項目)、「食品・異物への反応」(15項目)、「血液成分など」(21項目)、「性格などの特徴」(7項目)の4つのカテゴリーに分けられている(写真2~5)。

写真2◎ 遺伝子解析から見た「体の特徴」
[画像のクリックで拡大表示]
写真3◎ 遺伝子解析から見た「食品・異物への反応」
アルコール赤面反応はやはり高かった。
[画像のクリックで拡大表示]
写真4◎ 遺伝子解析から見た「血液成分など」
[画像のクリックで拡大表示]
写真5◎ 遺伝子解析から見た「性格の特徴」
私は「公平性を好むタイプ」・・・らしい。
[画像のクリックで拡大表示]

 興味がわいた項目をいくつか挙げると、まずはこちらにもありました、「寿命」。「体質」の中に「95歳まで生きる可能性」の項目が用意されている。しかし、95歳とは・・・。マイコードよりなんだかせこい。もっと現実的に、せめて75歳とか80歳まで生きる可能性が知りたいところだ。

 この寿命、データの信頼性は4段階中2段階目。結果が写真6だ。「95歳まで生きる可能性が一般的」とあるが、よく読んでみるとそのほかは「可能性が高め」と「可能性がより高め」となっている。つまり、「一般的」とは「可能性は低い」ということのようだ。日本人の男性の寿命が79.94歳(2012年)なので当たり前と言えば当たり前だが、「一般的」という表現はちょっといただけないなあ。

写真6◎ 遺伝子解析から見た「寿命」(1)
「95歳まで生きる可能性が一般的なタイプ」と言われても・・・。
[画像のクリックで拡大表示]

 ちなみに、この「寿命」の根拠となった研究は日本人が対象のもので、寿命や老化に関わる遺伝発現を制御する蛋白質「FOXO3A」の遺伝子型のSNP(rs2764264)を調べたものだという(写真7)。なお、マイコードには記載があった染色体の番号と領域はジーンクエストのサイトには記されておらず、ちょっと不親切。

写真7◎ 遺伝子解析から見た「寿命」(2)
日本人の約6割が私と同じ遺伝子型だという。ひと安心?
[画像のクリックで拡大表示]

“金メダル遺伝子”の解析結果は?

 ジーンクエストには写真5で示したように、「性格などの特徴」に学習能力や記憶力、忍耐力といった項目があるのが特徴だ。こんなことに遺伝子が関係しているの?、と思ったのが「経済・政治への関心」。私は「公平性を好む」タイプのようだが、公平性の意味がよくわからない。解説には「公平性を好むとは一例を挙げると、『雨が降っている日にだけ傘の値段を普段の価格の2倍にするお店についてどう思うか』といったものです」とある。うーん、やっぱりよくわからん。

 「筋力」という項目の結果は写真8、9。「多くの世界的なマラソンランナーはこの遺伝子型です」とうれしいことが書いてある。筋繊維は、持久力はないが大きな力が出せる「速筋」と、大きな力は出せないが持久力のある「遅筋」の2タイプがあるのだという。その速筋の発達と遅筋の形成に関連するのが「ACTN3遺伝子で、そのSNP解析の結果が写真9というわけだ。このACTN3遺伝子は通称“金メダル遺伝子”とも呼ばれており、中でも遺伝子型CCは「世界的な短距離走者」に多いことで有名だ。また、スポーツジムの中には、このACTN3遺伝子を調べてトレーニングメニューを組むところもあるという。

写真8◎ 遺伝子解析から見た「筋力」(1)
多くの世界的なマラソンランナーと同じ遺伝子型であることが判明。
[画像のクリックで拡大表示]
写真9◎ 遺伝子解析から見た「筋力」(2)
ただし、同じ遺伝子型の日本人が2割もいる。
[画像のクリックで拡大表示]

 私自身、子供のころはどちらかと言えば長距離が得意で、短距離が苦手だった理由がなんとなく分かった。部活動で陸上を続けてマラソンランナーを目指すべきだったかなあ。ちなみに、2社の遺伝子検査を受けてみて、一番うれしかったのがこの結果である(もっとも、ACTN3遺伝子は持久力の遅筋とは無関係との学説もあるようだ)。

 疾患リスクや体質ではなく、こういった性格や才能を遺伝子検査の主要項目にしている会社もある。有名なのは中国の企業、上海バイオチップコーポレーション。中国政府の出資を主体に設立された会社で、日本にも数多くの代理店がある。58000円(税込み)で、「学習・知能」「EQ(心の知能指数)」「音楽」「絵画」「踊り」「運動」の6カテゴリー41項目を調べ、全体としてその人物を4 段階に評価する。テレビのバラエティー番組でも取り上げられ、日本でも一時話題になった。自分の子供や結婚相手の“才能”を調べる一手段として拡がりつつあるらしい。

 解析根拠は脆弱に見えるが(難聴関連の遺伝子のSNP解析で音楽の才能を云々するとか・・・)、興味がある向きは「上海バイオチップ」で検索してみてください。(続く)

まんだ ももゆき
医療ライター
医療雑誌の編集に長年携わり、現在も医療関連記事の取材・執筆や書籍編集に従事。50歳代半ば、体重も50キロ台半ば。趣味は山登り、酒は角瓶か芋焼酎。