結果は写真7の通り「85歳まで長生きする可能性がやや低い」と出た。解説には、オランダのライデン大学が、90代と若い欧州人集団のゲノムを網羅的に解析した研究成果を基にはじきだした数値だと記されている。結果を見た人がショックを受けないよう、寿命については「遺伝要因と環境要因により決まってきます。ヒトの寿命に関しては複数の遺伝子が作用するものと考えられています。(中略)。ヒトの寿命を左右する要因としては後天的な環境要因の占める割合が相対的に大きく、双生児を対象にした研究の結果などから、遺伝的要因が関与する割合は25%程度と考えられています」と“安心させる”説明が添えてある。
スニップ、お酒を飲んで顔が赤くなる理由
ここでちょっと考えてみよう。遺伝子型による体質の区分けとは何のことか。肺腺がん1.66倍、前立腺がん1.46倍、食道がん1.41倍。これらの数値の持つ意味はどういうことか。1.66倍はとても危ない数値なのか…。
遺伝子情報とは、遺伝子本体であるDNAの中の4種の塩基(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)の長い配列そのもののことだ。ヒトの遺伝情報をすべて含んだDNAの塩基配列を「ヒトゲノム」と呼び、約30億の塩基対からなっている。この配列はヒトならば誰も99.9%以上は同一で、残り0.1%の塩基配列の違いや欠損の一部が、体質・体型の違いや、病気や奇形として現われる(ちなみにヒトとチンパンジーのゲノム構造は1%強しか違わないという)。
この塩基配列の中で、標準的な塩基配列と比べると1カ所だけ塩基が異なる(例えばAがTになっている)ものをSNP(スニップ、一塩基多型)と呼ぶ。個人向けの遺伝検査で調べているのは、約30億塩基の中に数百万個あるとされるこのSNPだ。どの部分の何の塩基が異なると、体質がどう変わるか、なんの病気になりやすいか、ある薬の効き方がどう違うか、といった研究結果がこの十数年の間に世界中で蓄積されてきた。同時に何十万カ所のSNPを一度に調べる遺伝子解析の技術も進歩し、現在の遺伝子検査の隆盛につながっているというわけだ。
さて、マイコードで示される体質の中、「食習慣」のカテゴリーに「アルコールによる顔の赤くなりやすさ」がある。私は「お酒に弱く、顔が赤くなりやすいタイプ」で日本人は34.4%となっている(写真8)。その遺伝子型の解説が次のページの写真9だ。