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知ってビックリ! 健診のウソ・ホント

「要経過観察」なら、そのまま様子を見ていてもいい?

 田村知子=フリーランスエディター

 

Q  職場健診で「要経過観察」と判定された項目がある。自覚症状がなければ、そのまま様子を見ていてもいい?

A  いいえ。「要経過観察」「要注意」といった再検査を求められない判定であったとしても、放置すれば、病気につながる恐れがある。医師や保健師の指導を受けて、生活習慣を改善しよう。

「要経過観察」の判定は、そのまま放置して良いという意味ではない。

 職場健診の判定で「異常なし」以外の結果が出た場合は、何らかの生活改善を行う必要がある。しかし、「要経過観察」や「要注意」といった軽度の異常を示す判定だと、具体的に何をしたら良いか分からない人も多いだろう。これらの判定は、「直ちに受診するほどではないが、注意して経過やデータ値を観察する必要がある」ということだ(下表)。そのまま何もせずに過ごしていれば、次回の健診では悪化している恐れもある。

健康診断の判定基準の例
判定結果説明概要
A異常なし今回の検査では異常が認められない
B要経過観察軽度の異常が認められるため、生活を改善し、経過を観察する
C要注意軽度の異常が認められるため、生活を改善し、自覚症状やデータ値の変化などに注意する
D要再検査中程度の異常が認められるため、再検査を必要とする
E要精密検査強い異常が認められるため、精密検査を必要とする
F要治療医師による治療を開始する必要がある
※職場健診の判定基準や所見は、実施する各医療機関や健診施設によって異なる。例は一般的な判定基準を基に編集部で作成。

 職場健診は、病気の可能性がある人をふるい分けする「スクリーニング検査」であり、もともと自覚症状のない人を対象としたものだ。自覚症状がないうちに異常を見つけ、対処することが目的でもある。つまり、自覚症状はなくて当たり前で、そういった状況で生活改善に対処するきっかけが与えられたと考えるのが望ましい。「要経過観察」と判定されたときは、社内の診療所や健診を受けた医療施設などで指導を受けて、生活習慣を改善するよう心がけてほしい。

「要再検査」でさえ放置する人が多数派

 しかし現実的には、「要経過観察」「要注意」に限らず、「要再検査」と判定された項目があっても、「自覚症状がないと、多忙を理由に再検査を受けないままでいる人も多い」と三井記念病院 総合健診センター特任顧問の山門實氏はいう。

 「『要再検査』という判定は、認められた異常が本当に病気かどうかを確認する必要があるということです。放置すれば、病気を見逃す恐れがあります」(山門氏)。また、「要精密検査」の判定はさらに重視してほしいと、山門氏は話す。「要精密検査と判定された場合は、がんなどの重篤な病気を疑うケースが多いのです」。

 山門氏が副理事長を務める日本人間ドック学会に加入している施設での人間ドック健診では、医療(治療)を要する人を「D1」、二次精査(精密検査)を要する人を「D2」と判定しているが、D2と判定された人でも、精密検査の受診率は50%にとどまるという。職場健診での精密検査の受診率はそれ以下になる。まして「要経過観察」で行動を起こす人は、さらに少なくなるだろう。

 「人間ドック健診では、検査結果をもとに必ず面談指導を行い、再検査や精密検査の必要性を説明し、受診率を100%にしようと努力しています。一方、一般の職場健診では、診断結果の通知書だけを渡される場合も多い。そのため、判定を学生時代の成績表のように見て終わり、としてしまいがちなようです」(山門氏)。

 職場健診の判定はその意味を正しく理解して、「要再検査」や「要精密検査」などがあれば、必ず検査を受けるようにしよう。「要経過観察」「要注意」といった判定の場合は、それまでの生活習慣を改善して、次回の健診も必ず受ける。とくに指導がない場合でも、改善には何が必要かを医師や保健師に相談し、積極的に自分の健康と向き合う姿勢が望ましい。

山門實(やまかど みのる)さん
三井記念病院 総合健診センター 特任顧問
山門實(やまかど みのる)さん 医学博士、人間ドック健診専門医。1972年群馬大学医学部卒業。83年三井記念病院腎センター科長、91年同健康管理科部長、94年同総合健診センター所長、02年同総合健診センター特任顧問。日本人間ドック学会副理事長をはじめ、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会、日本抗加齢学会などの評議員を務めている。
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