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知ってビックリ! 健康診断のウソ・ホント

職場健診の直前に摂生すれば、数値は正常に戻る?

 田村知子=フリーランスエディター

 

Q 職場健診の前に摂生すれば、数値は正常に戻る?

A はい。数値が改善するものもある。だがそれでは本末転倒。健診は普段の生活習慣を維持した状態で受けること。

直前の摂生で数値が改善することも(©yurok/123RF.com)

 「前回の職場健診で異常値を指摘されている。今回も引っかかったらマズイなぁ…」。学生時代の試験前のような気分になって、短期決戦で摂生しようとする人もいるだろう。職場健診の前に、暴飲暴食や運動不足などを解消すれば、数値の改善が期待できる検査項目は確かにある。

 例えば、中性脂肪値や血糖値などは、食事の影響を大きく受ける。このため、「10時間以上の空腹で検査を受けること」といった、健診前の食事に関する指示がある。東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター教授の奈良信雄氏によれば、「健診でいつも基準値を外れている人でも、健診の1~2週間前から摂生すれば、数値の改善が見られることが多い」という。

 また、肝機能検査のγ-GTP(ガンマ-GTP)値は、飲酒などによって肝臓に障害が起こると発生する酵素の多少を示している。飲酒の機会の多い人は、健診結果の中でも数値が気になる項目かもしれない。このγ-GTP値も飲酒状態に比較的早く反応するため、2週間ほど前から飲酒量を抑えれば、数値が下がる場合が多い。

短期では改善できない数値も

 一方で、糖尿病の診断基準の1つであるHbA1cには、短期勝負が通用しない。HbA1cは赤血球のたんぱくであるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したもので、検査前1~2カ月間の平均的な血糖の状況を反映する。検査前の食事や運動の影響を受けにくいので、短期間の摂生ではほとんど変わらない。血糖値と違いごまかしがきかないこともあって、糖尿病予備群の発見に役立っている。

 ただし、いずれにしても職場健診は、普段の生活習慣のままで受けるのが鉄則だ。健診での数値の改善だけを目的に摂生しても、それは学生時代の試験前の一夜漬けと同じで、本当に自分のためにはならない。「健診での数値が改善したために病気を見逃す恐れもあるし、数値が改善したことに安心してまた暴飲暴食を続ければ、病気になるリスクが高まる」(奈良氏)。

 健診前に摂生に取り組んだ人は、健診が終わってからもぜひ、その生活習慣を続けてほしい。

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奈良信雄(なら のぶお)さん
東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター長
奈良信雄(なら のぶお)さん 1950年、高松市生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。同大学第一内科、放射線医学総合研究所、カナダのトロント大学オンタリオ癌研究所、東京医科歯科大学医学部教授を経て、1999年より同大学大学院教授。専門は内科学、血液病学、臨床検査医学。一般向けの健康に関する啓蒙活動に積極的で、『病院の検査が分かる本』(講談社)、『ホームドクターを探せ』(宝島社新書)など多数の著書がある。