短期では改善できない数値も
一方で、糖尿病の診断基準の1つであるHbA1cには、短期勝負が通用しない。HbA1cは赤血球のたんぱくであるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したもので、検査前1~2カ月間の平均的な血糖の状況を反映する。検査前の食事や運動の影響を受けにくいので、短期間の摂生ではほとんど変わらない。血糖値と違いごまかしがきかないこともあって、糖尿病予備群の発見に役立っている。
ただし、いずれにしても職場健診は、普段の生活習慣のままで受けるのが鉄則だ。健診での数値の改善だけを目的に摂生しても、それは学生時代の試験前の一夜漬けと同じで、本当に自分のためにはならない。「健診での数値が改善したために病気を見逃す恐れもあるし、数値が改善したことに安心してまた暴飲暴食を続ければ、病気になるリスクが高まる」(奈良氏)。
健診前に摂生に取り組んだ人は、健診が終わってからもぜひ、その生活習慣を続けてほしい。
東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター長

