会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q 白血球の数が増えたら、白血病の可能性がある?
A 白血病では白血球数が増えることもあれば、減ることもある。基準値から大幅に外れる場合は精密検査が必要。
「白血病」とは血液のがんの1つで、骨髄で血液が作られる過程で、がん化した細胞(白血病細胞)が無秩序に増殖し、正常な血液細胞が減少する病気だ。国立がん研究センターのがん対策情報センターが発表した「2015年のがん統計予測」によれば、白血病の罹患数(新たに白血病と診断される数)は男女合わせて年間1万3800人。死亡数は8200人と推計されている。
白血病は白血病細胞の特徴から「骨髄性」と「リンパ性」に分けられ、さらに進行の速度から「慢性」と「急性」に分けられる。職場健診の血液検査などで白血球数が増加すると、白血病を心配する人もいるようだ。
しかし、血液内科学、臨床検査医学を専門とする順天堂大学医学教育研究室特任教授の奈良信雄氏によれば、「白血病のタイプによって、白血球数が増える場合もあれば、逆に減る場合もある」という。また、そもそも白血病は、白血球の数だけでなく、赤血球や血小板、白血球の種類の比率(分画)の異常から総合的に診断されるものだ。白血球が増えたからといって、即、白血病が疑われるわけではない。
急性骨髄性白血病の場合は白血球が減る
白血球には、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入したときに、それを排除し防御する働きがある。白血球数は1日の中でも変動するが、基準値の目安は3600~9300個/マイクロリットル(μL)。「慢性骨髄性白血病の場合は白血球数が増えやすく、2万~3万個/ μL以上になることもあります。一方、急性骨髄性白血病の場合は、白血球数が増えることも減ることもあります」(奈良氏)。国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」によると、慢性骨髄性白血病の発症頻度は10万人に1~2人、急性骨髄性白血病の発症頻度は10万人に2~3人とされる。