無料クーポンがあるがん検診も
一方、通常の職場健診で発見が期待できないものもある。その代表が、がんだ。職場健診でも、造影剤のバリウムを使った胃のエックス線検査や、便の潜血反応による大腸の検査、胸部エックス線による肺の検査などを行うこともある。だが、がんが見つかるケースはそれほど多くない。「そもそも職場健診を受ける人にがんが少ないこともあるが、ごく初期の段階であるためにがんを発見できなかったケースや、がんのタイプに検査方法がマッチしていなかったケースがある」(奈良氏)。
それでも、判定に異常所見があった場合は、がんの疑いも考えられるので、「要受診」「要精密検査」などの指示には必ず従おう。奈良教授によれば「便の潜血反応検査で陽性の結果が出て、大腸の内視鏡検査を受けたところ、大腸がんが発見されたという例もあった」という。
がんが気になる人は、職場健診とは別に、がん検診を受けた方がいい。がん検診は、健康増進法に基づく健康推進事業として、それぞれの市区町村が実施している。前述の胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん検診は40歳以上を対象に、年に1回(乳がん検診は2年に1回)受けられる。大腸がん検診では40歳から5年ごとに60歳までの計5回、乳がん検診では40歳時に無料クーポン券が配布されている。職場健診のオプションとしてがん検診がある場合は、受けておくといいだろう。
ちなみに、人間ドックは職場健診などより検査項目が多く、オプションとしてがんの検査を加えることもできる。だが、これも全身の病気がすべて分かるというものではない。また、人間ドックには健康保険が適用されず、費用は全額自己負担となる。検査内容や費用は施設によって異なるので、受診を検討する場合は、事前にしっかり確認しよう。
東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター長
