会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q 尿酸値が高くても、痛風の発作が治まれば心配はいらない?
A いいえ。尿酸値の高さによるが、放置すれば動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中などの合併症を起こす恐れがある。

職場の健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されても、いわゆる「痛風発作」を経験したことがないので、それほど気にしていないという人も多いかもしれない。痛風発作を起こしたことのある人でも、痛みが治まってしまえばそのまま放置しがちだ。
だが、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長の山中寿氏は注意を促す。「尿酸値が7.0mg/dLを超えている期間が長くなると、現時点では症状がなくても、いずれ痛風発作を起こす危険があります。さらに、発作が起きても放置しているような人は、心筋梗塞や脳卒中など、動脈硬化による合併症が起こりやすいと考えられています」。
痛風の応急処置は患部を冷やすこと
尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が血液に溶けきれずに結晶化して、関節などに溜まっていく。この結晶が原因で強い炎症を起こすのが、痛風発作と呼ばれる「痛風関節炎」だ。
痛風発作は足の親指や足首など下肢の関節に現れることが多い。発作が起きると、関節が急に腫れ上がり痛みが走る。「関節の腫れや痛みは一般的に、24時間以内にピークに達します。発作の程度には個人差がありますが、ひどいケースでは1歩も歩けなくこともあります。応急処置にはまず、冷やすこと。その後、消炎鎮痛剤を用います」(山中氏)。
痛風発作の症状は7~10日程度で治まり、次に発作が起きるまでは痛みがまったくない。そのため、放置してしまう人も少なくない。しかし、山中氏は「痛風発作を放置して発作を繰り返すようになると、慢性の関節炎に移行したり、腎障害を起こしたりすることがあります。また、尿酸値が高い人はメタボリックシンドロームになりやすいという研究報告もあり、高血圧や動脈硬化などとの合併症を引き起こす恐れもあります」と話す。