会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q ヘビースモーカーだけど、職場健診の胸部エックス線検査で問題なければ大丈夫?
A 胸部エックス線検査で異常なしでも安心はできない。喫煙者は「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」の早期発見のため、肺機能検査の受診と簡易問診票でのセルフチェックがお勧め。

「COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)」は肺の生活習慣病といえる病気だ。喫煙との関連が大きいことから、“たばこ病”と呼ばれることもある。とくに、喫煙歴のある40歳以上の人に発症しやすいといわれている(思い当たる人は3ページ目にあるセルフチェックで判定できます。あとで、ぜひ行ってください)。
喫煙歴があれば“たばこ病”の「COPD」に要注意
COPDの主な原因は「タバコに含まれる有害な物質やガス、微粒子などを長期にわたって吸い続けることで、肺内の気管支、細気管支、肺胞に炎症が起こり、肺の空気の流れが悪くなること」と、COPDを専門とする日本医科大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏は説明する。その結果、咳や痰が慢性的に続いたり、軽い運動でも息切れがしたりといった症状が現れる。
以前は、咳や痰が慢性的に続く状態は「慢性気管支炎」、炎症が進んで肺胞が壊れてしまった状態は「肺気腫」とされていたが、現在はこれらを合わせてCOPDと呼んでいる。
「慢性的な症状が次第に進行していくと、肺だけでなく、全身に症状が現れ、さまざまな病気も起こりやすくなります」と、木田氏は指摘する。「まず、肺に起こる炎症と同様に、手足の筋肉にも慢性的な炎症が生じることで、筋力が低下してきます。少しでも動くと息苦しいので、自宅にこもりがちになり、ますます筋力の低下を招くほか、不眠やうつ状態に陥る人もいます。また、COPDは動脈硬化や心筋梗塞、肺がん、糖尿病、骨粗しょう症など、全身のさまざまな病気の原因にもなると示唆されています」(木田所長)
国内のCOPDの患者数は増加傾向にあり、600万人以上と推定されている。しかし、厚生労働省の調査では、検査や治療を受けている人は26万人程度にとどまっているのが現状だ。死亡者数も増えており、2014年には1万6000人以上が亡くなったとされているが、死亡時の診断が正確に把握されていなかったケースが含まれていない可能性が高い。国際的に見るとCOPDは1990年度には死因の第6位だったが、2020年には第3位にまで増加すると予想されている。
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