会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q プリン体が多いビールなどを避ければ尿酸値は下がる?
A いいえ。プリン体の摂取量を減らすには、食事の総量を減らす必要がある。
職場健診では、痛風発作につながる「尿酸値」を気にする人も多いだろう。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長の山中寿氏は、「痛風はかつては50~60代で発症することが多いと言われていましたが、近年では30~40代での発症も珍しくなく、若年化しています」と言う。
尿酸とは体内の新陳代謝によって生じる老廃物で、血液中の尿酸の濃度を示すのが尿酸値だ。正式には「血清尿酸値」と言い、血清1dL中に尿酸が何ミリグラム(mg)含まれているかを表す。尿検査で調べるものと誤解されることがあるが、血液検査の項目の1つだ。
通常、尿酸は体内で産生される一方で、腎臓から尿に排出されるため、血液中の尿酸は一定量に保たれている。しかし、何らかの原因で産生量が過剰になったり、排泄量が少なくなると、血液中の尿酸が増え、尿酸値が高くなる。尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断され、この状態が長くなるほど、痛風発作を発症するリスクが高まる。
プリン体はすべての食事に含まれる

尿酸は、体内で「プリン体」が分解されて作られる。プリン体とは、あらゆる生物の細胞で遺伝子の主体として働く核酸(DNA、RNA)や、細胞のエネルギー源(ATP、GTP)を構成する物質のことだ。細胞の新陳代謝やエネルギー消費の過程で分解されて、尿酸となる。
「人間以外の生物の細胞にもプリン体が含まれています。そして、細胞の数が多いレバーやたらこ、乾燥によって細胞が凝縮される干物といった食品は、プリン体の含有量も多くなります。ただし、プリン体はすべての食品に含まれていますし、食事の摂取量が多いと体内で作られるプリン体が多くなり、尿酸も増えます。ですから、個々の食品に含まれるプリン体の含有量を細かく気にするよりも、食事の総摂取量を見直す方が、尿酸値の改善には有効です」(山中氏)
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