会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q コレステロールや中性脂肪の値が基準範囲内であれば心配いらない?
A いいえ。その人の体質によっては、動脈硬化のリスクが隠れている場合もある。
コレステロール値や中性脂肪値の異常値(脂質異常症の判定基準)については、以前、本コラムで紹介した(「悪玉コレステロール値が高いのは、お酒を飲みすぎたから?」)。しかし、生活習慣病の予防・治療を専門とする岡部クリニックの岡部正氏によれば、職場健診での検査値が基準範囲内であっても、動脈硬化のリスクが隠れている場合があるという。
見逃されがちな食後の高中性脂肪血症
まずは、脂質異常症の判定基準を改めて確認しておこう。職場健診では基本的に、血液検査による脂質代謝検査で、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値のいずれか1つでも以下の基準に該当すると、脂質異常症が疑われる。
LDLコレステロール値 | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域 高LDLコレステロール血症 (高リスクの病態がないか検討し、 治療の必要性を検討する) | |
HDLコレステロール値 | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
中性脂肪 (トリグリセライド)値 | 150mg/dL以上 | 高中性脂肪(高トリグリセライド)血症 |
検査値が基準範囲内でも動脈硬化のリスクが隠れている場合があると冒頭で述べたが、特に職場健診で異常が見逃されやすいのが「食後の高中性脂肪血症」だと、岡部氏は指摘する。
「中性脂肪値は血糖値と同様に、食事の影響で大きく変動し、食後に上昇します。ただ、食後高中性脂肪血症の人は上がり幅が大きく、食後に220mg/dL以上にまで達します。ところが、職場健診では、朝食を抜き、10時間以上の絶食の後で採血を受ける例も多いので、こうしたケースが見逃されてしまうことがあるのです」
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