日経グッデイ

知ってビックリ! 健診のウソ・ホント

休肝日を設ければ中性脂肪値は下がる?

 田村知子=フリーランスエディター

会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。

Q  休肝日を設ければ中性脂肪値は下がる?

A  いいえ。休肝日を設定しても、アルコールの総摂取量が減らなければ、中性脂肪値の改善は期待できない。

 中性脂肪値は、前回コラム「悪玉コレステロール値が高いのは、お酒を飲みすぎたから?」で紹介したように、血液検査による脂質代謝検査で調べるものだ。

 職場健診の脂質代謝検査の項目では、中性脂肪値よりもコレステロール値の方を気にする人が多いかもしれない。しかし、生活習慣病の予防・治療を専門とする岡部クリニックの岡部正氏は、「中性脂肪もコレステロールを介して間接的に動脈硬化を促進しますので、同様に注意が必要です」と指摘する。

 「中性脂肪が増えると、血液中の余分なコレステロールを回収して動脈硬化を予防する働きを持つHDL(善玉)コレステロールが減ることが分かっています。さらに、中性脂肪が多いと、『スモールデンスLDLコレステロール』が増えるともいわれています。スモールデンスLDLは、LDLコレステロールよりも粒子が小さく、血管内により多く入り込み、また酸化されやすい性質があります。LDL が悪玉なら、スモールデンスLDLは“超悪玉”と呼べるものです」

 また、中性脂肪は体のエネルギー源となるものだが、使い切れずに余ると脂肪組織に蓄えられて、皮下脂肪や内臓脂肪となる。中性脂肪の増えすぎは、肥満にもつながるのだ。

中性脂肪値が高ければアルコールと糖質を控える

アルコールは肝臓で中性脂肪の合成を促進する。(©Olexandr Kovernik-123RF)

 岡部氏によれば「職場健診で『中性脂肪値が高い』と指摘される人の多くは、食生活を変えるだけでも改善が見られます」という。「特に控えたいのが、肝臓で中性脂肪の合成を促進するアルコールと糖質(糖分)です。ご飯のほか、パンやパスタ、ラーメン、うどんといった小麦粉を主原料とした炭水化物も、体内で消化されると糖質として吸収されるので、食べ過ぎには注意が必要です」。

 質問者のように、中性脂肪値を下げるためには、アルコールを飲まない休肝日を設ければよいだろうと考える人は多いが、「休肝日を設けても、普段の日に飲み過ぎていれば意味はありません。また、ビールはアルコール度数が低いからといって、量をたくさん飲めば同じことです。肝心なのは、アルコールの総摂取量を減らすこと。休肝日を設けるなら、普段の日のアルコールの適量の目安も守るように心がけてください」(岡部氏)。

スイーツや果物も中性脂肪値を上げる

 また、岡部氏は「アルコールがなかなか止められないという男性と同じように、スイーツがなかなか止められないという女性も多く見受けられます。甘いものを食べてしまう背景には、糖分を取ることで、ストレスを紛らわせている場合も多い。そうしたケースでは、趣味など自分の好きなことで気分転換するといいでしょう」と話す。有酸素運動で脂肪が燃焼されると、血液中の中性脂肪も減少するので、ウォーキングやジョギングなどを習慣にできるとなおいいだろう。

 スイーツよりヘルシーなイメージのある果物も、果糖が含まれているため、食べ過ぎれば中性脂肪値を高める原因になるという。「最近の果物は特に、品種改良で糖度が高くなっているので注意が必要です」(岡部氏)。

 アルコールや果物の1日の摂取量は、以下の表を目安にするといい。

アルコール・果物の適量の目安(いずれか1種類のみを摂取する場合)
アルコール(カロリー換算で1日約200kcalを目安に)
ビール中瓶1本(500mL)
日本酒1合(180mL)
焼酎(35度)1/2合(90mL)
ウイスキーシングル(30mL)2~3杯弱
ワイングラス2杯(240mL)
缶チューハイ1.5杯弱(500mL)
果物(カロリー換算で1日約80~100kcalを目安に)
いちご15粒
さくらんぼ20粒
みかん2個
1個
1個
バナナ1本
オレンジ1個
グレープフルーツ1個
りんご1/2個
岡部氏の著書『ズボラでも中性脂肪とコレステロールがみるみる下がる47の方法』(アスコム)と厚生労働省「保健指導における学習教材集(確定版)」を基に編集部で作成。

中性脂肪値の改善には“ヌルネバ食材”を

 中性脂肪値の改善のために積極的に取りたいのは、海藻類やオクラ、山芋、里芋といった“ヌルヌル・ネバネバ”した食材だ。これらの食材には、水溶性食物繊維のムチンやペクチンが含まれており、腸における脂肪や糖質の吸収を抑えてくれる。コレステロールの吸収も抑えてくれるので、一石二鳥だ。また、ムチンには胃の粘膜を保護する働きがあるので、アルコールのつまみにも適している。

 以下に、中性脂肪値とコレステロール値の改善のために、できるだけ控えたい食べ物、食べ過ぎには注意したい食べ物、積極的に取りたい食べ物をまとめたので、参考にしてほしい。

中性脂肪値、コレステロール値を上げる食べ物、下げる食べ物
積極的に取りたい食べ物食べ過ぎには注意したい食べ物できるだけ控えたい食べ物
中性脂肪値の改善のために海藻類・オクラ・山芋・里芋など

イワシ・サバ・マグロ・サンマ・アジなどの青魚
果物

炭水化物を主原料としたご飯・パン・パスタ・ラーメン・うどんなど
アルコール

砂糖・ハチミツなどの糖分

砂糖をたっぷり使った菓子

炭酸飲料・ジュース・スポーツドリンクなどの清涼飲料
LDLコレステロール値の改善のためにしいたけ・しめじ・まいたけ・えのきなどのきのこ類

海藻類

こんにゃく

豆腐・高野豆腐・納豆・油揚げ・味噌などの大豆製品

イワシ・サバ・マグロ・サンマ・アジなどの青魚
鶏卵

イクラ・タラコ・スジコ・カズノコなどの魚卵

レバー

うなぎ
牛肉や豚肉の脂身

鶏肉の皮

バター・チーズ・牛乳

生クリーム・アイスクリーム

マーガリンやショートニングを使って作る菓子

パン・ケーキ・スナック菓子
岡部正(おかべ ただし)さん
岡部クリニック院長
岡部正(おかべ ただし)さん 1953年東京都生まれ。慶応義塾大学医学部卒業。亀田総合病院副院長を務めた後、オーダーメード医療を理想に、東京・銀座に岡部クリニックを設立。専門医として生活習慣病の予防と治療に尽力している。テレビ番組など各メディアでも活躍。『ズボラでも中性脂肪とコレステロールがみるみる下がる47の方法』(アスコム)など著書多数。日本病態栄養学会評議員、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本肥満学会会員。