会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q 職場健診の胸部エックス線検査で「異常陰影あり、要精密検査」との判定だったが、肺がんの可能性大?
A 特に問題のない、以前にかかった感染症による炎症の痕跡でも「異常陰影あり」と判定されることがある。怖がらず精密検査を受けて、原因を確認することが大切。
職場の健康診断で受ける胸部エックス線検査で「肺に影がある」と言われたとき、真っ先に心配するのは肺がんだろう。検査の主な目的も、肺がんの早期発見にある。一般に、職場健診などではがんが2cm程度の大きさになると、エックス線画像に影が見つかるといわれている。
呼吸器疾患を専門とする国立病院機構 東京病院院長の大田健氏によれば、健康診断の胸部エックス線検査で「異常陰影」として比較的よく見つかるものとしては、「胸膜肥厚」(きょうまくひこう)と「肺硬化巣」(はいこうかそう)があるという。「胸膜肥厚は肺を覆っている胸膜(肋膜)の炎症が治癒したあとに、胸膜が厚くなって残る痕(あと)。肺硬化巣は結核や肺炎などの感染症による炎症の痕で、壊れた肺の組織にカルシウムが沈着する「石灰化」をしばしば伴う。
「これらが発見された場合、『陳旧性』(ちんきゅうせい)と呼ばれる古くて活動していない痕であれば、あまり心配はいりません。ただし、その時点で感染症にかかっていて治療が必要な肺硬化巣の場合もありますし、そのほかの病気による異常陰影のこともあるので、『異常陰影あり、要精密検査』と判定されたら、指示に従って精密検査を受け、原因を明らかにすることが大切です」(大田氏)。
この記事の概要
