1度の血液検査で糖尿病と診断される場合も
ヘモグロビンA1cは、血液の赤血球に含まれるヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、1日の血糖値の平均が高いほど増える。血液検査でヘモグロビン中にヘモグロビンA1cが何%あるかを調べることで、検査前の1~2カ月間の血糖値の平均値を推察できる。
「ヘモグロビンA1cはもともとは糖尿病患者さんの血糖コントロールの状態を見るために使われていましたが、変動する血糖値と比べて判定しやすいため、1970年代半ばから糖尿病の診断や職場健診にも用いられるようになりました。米国などではヘモグロビンA1cだけで糖尿病を診断することもあるようですが、日本ではあくまでも血糖値と併用して診断します」(真山氏)
真山氏によれば、ヘモグロビンA1cの採用による最大のメリットは、「1回の血液検査で糖尿病と診断できるようになったこと」だという。
「かつては、血液検査で糖尿病が疑われた人には、二次検査として『ブドウ糖負荷試験(OGTT:Oral Glucose Tolerance Test)』が行われていました。OGTTでは、空腹時の血糖値を調べたうえで、75gのブドウ糖液を飲み、30分間隔で2時間後まで血糖値と血中インスリン値を測定します。糖代謝の状態が詳しく分かる一方で、患者さんや医師の負担が大きく、費用もかかる。そのため現在では、厳密な血糖コントロールが必要な『妊婦糖尿病』が疑われる妊婦さんに実施する以外は、ほとんど行われていないのが実情です」
日本糖尿病学会では、糖尿病の診断には、以下のような基準を設けている。
まず、血液検査で血糖値とヘモグロビンA1c値を調べる。空腹時血糖値が126mg/dL以上なら「糖尿病型」、60mg/dL以上110mg/dL未満なら「正常型」、どちらにも属さない場合(110mg/dL以上126mg/dL未満)は「境界型」と判定される。随時血糖の場合は、200mg/dL以上で「糖尿病型」となる。
空腹時血糖値または随時血糖値で糖尿病型と判定され、同時にヘモグロビンA1cが6.5%以上だった場合には、1回の血液検査で糖尿病と診断される。また、血糖値で糖尿病型と判定され、糖尿病の典型的な症状(のどが渇く、体重の減少、尿量の増加など)や明らかな合併症(糖尿病網膜症など)がある場合にも、同様に1度の検査で糖尿病と診断される。