会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q 大腸の便潜血反応検査が陽性だった。大腸がんの可能性は高い?
A 陽性反応で大腸がんが見つかるのは数パーセント。過大な心配は無用だが、精密検査は受けておこう。

大腸の便潜血反応検査は、職場の健康診断では必須項目ではないが、任意または大腸がん検診として実施されていることも多い。大腸がんの患者は近年増えており、国立がん研究センターによると2015年の罹患数は肺がん、胃がんを上回る13万5800人(第1位)、死亡者数は5万600人(第2位)になる見通しだ。
便潜血反応検査は、消化管での出血があるかどうかを調べるもので、主に大腸がんの早期発見を目的にしている。そのため、陽性反応が出ると「大腸がんかもしれない」と不安に思う人もいるだろう。
しかし、 消化器関連の疾患を専門とする慶應義塾大学医学部の鈴木秀和教授は「便潜血反応検査で陽性となっても、大腸がんが見つかるのは数パーセント程度。その多くは、便秘の際にいきんだりなどの一過性の出血や粘膜傷害によるもので、過大な心配はいらないことが多いです」と話す。
一過性の出血で陽性が出ることも
消化管にがんやポリープがあると、便が通る時にこすれて出血する。ただ、その部位や出血の量によっては、便を肉眼で見ても分かりづらいことがある。そこで、肉眼では見えない微量の血液が便に混ざっていないかどうかを調べるのが、便潜血反応検査だ。
便潜血反応検査には「化学法」と「免疫法」の2種類があり、化学法では食道から肛門までの出血が、免疫法では主に大腸での出血が分かる。ただし、「化学法は食べた肉や魚など人間以外の血液にも反応するため、現在では人間の血液の赤血球中の成分であるヒトヘモグロビンに反応する免疫法での検査が主流となっています」(鈴木教授)。
便潜血反応検査で陽性が出ても、がんやポリープのない「偽陽性」の場合もあると、鈴木教授は話す。「例えば、便秘で便が硬くなっているときなども粘膜がこすれて出血することがありますが、このような場合は、一時的なものですので、すぐに止まります」。