会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q 放射線の医療被ばくが心配で、職場健診の胸部エックス線検査だけは受けたくない。拒否することはできる?
A 基本的には受ける義務があるが、妊娠中など、医師が認めた場合に限り省略できるケースもある。

職場健診は法律上、会社には実施義務があり、従業員には受診義務があると、前回の記事(職場健診は、受けなければそれで済むんでしょ?) で紹介した。では、相談者のように医療被ばくが心配という理由で、胸部エックス線検査だけを拒否することはできるのだろうか。
職場健診の検査項目は、厚生労働省が労働安全衛生法に基づいて定めている。結核や肺がんなど肺に関わる病気の早期発見につながる胸部エックス線検査も、その1つだ。そのため、基本的にはほかの検査と同様に、従業員には受ける義務がある。
実際、過去には、胸部エックス線検査の有害性を理由に受けることを拒否した公立中学校の教師に対し、学校側が減給の懲戒処分を科したケースもある。それを不服とした教師が訴訟を起こし、地裁では学校側の減給処分は不当とする判決が出たものの、高裁、最高裁では学校側の減給処分は妥当と判断されている。
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