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「わたしも、がんでした」

変わったワタシ 再発と自分への不安

本人編 悩んでいるのは自分だけじゃない(7)

 杉浦 克昭(ピーコ)=ファッション評論家・シャンソン歌手・タレント

ピーコこと杉浦克昭さん。ファッション評論家、タレント、シャンソン歌手といくつもの「顔」を持ち、メディアで活躍するピーコさんは1989年、眼のがんにかかりました。当時44歳。まさに働き盛りのピーコさんの左目を襲ったのは、30万人にひとりという悪性腫瘍。ショービジネスの世界で最前線に立っていたピーコさんは、決断を迫られます。仕事とがん治療とをどう両立させるのか。自分の未来に「がん」が立ちふさがったとき、何が救いとなるのか。働き盛りのみなさんにこそ、読んでほしい。がんと向き合い、がんと共に生き、働き、がんと決別したピーコさんの言葉です。

 がんを切除できたとしても、転移や再発の可能性はあります。また、抗がん剤や放射線などによる治療を併用することもあります。いずれにしても「がんと共に働く、生きる」新しい暮らしが始まります。
 その後も半年に1回の精密検査の度に、ピーコさんは身体の負担や転移への恐れに悩まされます。でも、そのために新たなことに出会ったり、いままでわからなかったことに気づいたりしていきます。
 

 がんは、治療が終わっても、追いかけてきます。転移の可能性は否定されましたが、術後5年間は半年に1回、全身の精密検査を受けなければいけません。この検査が毎回とてもつらかった。半年に1回というのは、ちょうど自分ががんにかかっていたことを忘れそうになる頃なんですね。ところが、検査を受けることで再び、

 (もしかしたら転移しているかもしれない)
っていう恐れが舞い戻ってきてしまう。

 そもそもわたしがかかったメラノーマというがんがちょっと特殊で、脳、骨、内臓とさまざまな組織に転移する可能性があったので、何度も何度も術後検査が必要だったんです。

 しょうがないけれど、毎回長時間に及ぶ検査の影響でしばらくの間はからだがだるくなる。そんなこんなが嫌でした。

 がんから脱したのに落ち込んでいるわたしを、永六輔さんが見かねて、「なにか習い事をしたほうがいい」とすすめてくれて、シャンソンを歌うことにしたんです。

 今もシャンソンを続けていますが、がんにならなかったらみなさんの前で、シャンソンを歌うようなこともなかったでしょう。シャンソンは人生の歌。人生の歌をうたうきっかけは、人生を奪うかもしれないがんがもたらしてくれた。

サングラスをかけるよう頼まれて

 左眼をがんで失い、義眼になると、単に片目が見えない、という以外の「障害」があることも、はじめて知りました。

 義眼になったことをわたし自身は隠すつもりは全くなかったんですね。だから、復帰後、はじめてテレビに出るときも普通にカメラの前に立とうと思っていた。ところが、プロデューサーにサングラスをかけるよう頼まれたんですね。見ている視聴者が義眼を気持ち悪く思うかもしれないから、と。彼も悪気があったわけじゃないし、一理はある意見だから、そこであえて抵抗はしませんでした。でも、ああ、こんなことが例えばメディアに出るときの障害になるんだ、というのをわが身のことになってはじめて実感しました。

 障害者を特別扱いしろ、という話ではもちろんありません。障害があるかないかを、価値判断に入れないほうがいいな、と思ったんです。

国立がん研究センターがん対策情報センター編
『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』 (日経BP社、2013年9月発行)より転載。


杉浦 克昭(ピーコ)さん
ファッション評論家・シャンソン歌手・タレント
杉浦 克昭(ピーコ)さん 文化服装学院研専卒業後、1980年おすぎとともに《おすぎとピーコ》としてTBS「久米宏の土曜ワイドラジオTOKYO」に出演し、デビュー。44歳で30万人にひとりという悪性腫瘍で左目を摘出する。がんをきっかけにシャンソンを始め、2004年1月にはシャンソン歌手としてCDデビューを果たす。ファッション・ジャーナリストとして服飾評論はもとより、さまざまな分野に活動の場を広げている。

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中

 医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より

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