日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > 医療・予防  > 「わたしも、がんでした」  > 本当にわたし「がん」なの!?
印刷

「わたしも、がんでした」

本当にわたし「がん」なの!?

本人編 悩んでいるのは自分だけじゃない(2)

 杉浦 克昭(ピーコ)=ファッション評論家・シャンソン歌手・タレント

ピーコこと杉浦克昭さん。 ファッション評論家、タレント、シャンソン歌手と いくつもの「顔」を持ち、メディアで活躍するピーコさんは1989年、眼のがんにかかりました。 当時44歳。まさに働き盛りのピーコさんの左目を襲ったのは、30万人にひとりという悪性腫瘍。 ショービジネスの世界で最前線に立っていたピーコさんは、決断を迫られます。 仕事とがん治療とをどう両立させるのか。 自分の未来に「がん」が立ちふさがったとき、何が救いとなるのか。 働き盛りのみなさんにこそ、読んでほしい。 がんと向き合い、がんと共に生き、働き、 がんと決別したピーコさんの言葉です。

 突然だろうと、なんとなく心の準備をしていようと、がんと診断されれば、やはり心は揺れます。しかし、そうした状況でも今後の治療など、いろいろと決めていかなければなりません。
 がんと診断されても、ピーコさんは、それほど動揺していないつもりでした。しかし、おいしいはずのうなぎのかば焼きを食べても、まったく味を感じないことから、実は強いショックを受けていると気づきます。

 メラノーマは皮膚にできる悪性腫瘍。皮膚がんの一種です。あまり聞いたことのない言葉でしょう。罹患率は30万人にひとりというかなり珍しい病気です。わたしは、たまたまメラノーマにかかった友だちがいたから知っていたんです。

 検査を終えると、佐伯先生は言いました。

 「まず、家族を呼んできてください」

 「来てません。今日はわたしひとりです」

 「わかりました、じゃあ、あなたに話しましょう。目医者としては、あなたの目を摘出したくないけれど、放っておくと、左目の腫瘍が視神経から脳に転移し、さらには全身に転移する恐れがあります。するとからだが真っ黒になって死んでしまう。だから取ることをおすすめします。もし、入院する場合は、部屋が空いたらご連絡します。まずは、どうするか帰ってご家族と相談してください」

  わたしは即座に言いました。

 「先生、わたしの左目、取ってください。目は2つあります。ひとつなくなっても、もうひとつはまだ見えるんでしょう」

  ほう、と、佐伯先生、感心したように声を上げました。

 「うむ、あなたのように男らしい人はなかなかいない」

「告知されてショックなんだ」

 わたしに男らしいだなんて、と内心苦笑していたくらいですから、その時はあまり動揺していませんでした。

 少なくとも自分ではそう思っていた。この日も一番ショックだったのは、がんを告知されたことじゃなくて、夜約束していたとあるお気に入りのスターとのお食事をキャンセルしないといけなかったこと、だったくらいですから。

 でもね、そう思っていたのは表面だけで、やはりかなりショックを受けていたんですね。 夕方、病院をあとにして、小田原のうなぎ屋さんで食事をしたんです。ところが、おいしいかば焼きをいただいたのに味がしない。「砂を噛むような」という表現があるけれど、まさになんの味もしない砂をじゃりじゃりとただ噛んでいるような感じ。味覚が働いていない。そこで、はじめて実感しました。

 「あぁ、わたし、やっぱり、がんなんだ。告知されてショックなんだ」って。

国立がん研究センターがん対策情報センター編
『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』 (日経BP社、2013年9月発行)より転載。


杉浦 克昭(ピーコ)さん
ファッション評論家・シャンソン歌手・タレント
杉浦 克昭(ピーコ)さん 文化服装学院研専卒業後、1980年おすぎ とともに《おすぎとピーコ》としてTBS「久米宏の土曜ワイドラジオTOKYO」に出演し、デビュー。 44歳で30万人にひとりという悪性 腫瘍で左目を摘出する。がんをきっかけにシャンソンを始め、2004年1月にはシャンソン歌手としてCDデビューを果たす。 ファッション・ジャーナリストとして服飾評論はもとより、さまざまな分野に活動 の場を広げている。

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中

 医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より

>>詳しくはこちら(Amazonのページにジャンプします)

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 男性ホルモンを増やす5つのポイント

    年齢とともに、男性ホルモンの低下から、体調が優れない、イライラする、よく眠れないという症状が表れる。こうした状態を放っておくと、身体機能の低下やうつ病、メタボリック症候群などの病気リスクが高まってしまう。男性ホルモンについて正しく理解し、どのように生活習慣を改めれば男性ホルモンが増え、ハツラツとした生活を取り戻せるのかについて、5つのポイントにまとめて紹介しよう。

  • 筋肉を衰えさせない「たんぱく質」の正しい摂取法

    最近、筋肉の大切さが指摘される中で、「たんぱく質をしっかりとるべき」という意識が定着しつつある。だが、たんぱく質は、誤解されていること、そして知っているようで知らないことが多くある。いくらとってもいいのか、肉と大豆ではどっちがいいのかなど、即答できない人も多いだろう。本特集では、たんぱく質の基礎から、正しい摂取法、そして身近な食品に含まれるたんぱく質の量までを一挙に紹介する。

  • あなたの腎臓、大丈夫? 急増する慢性腎臓病を防ぐ

    普段あまり意識することの少ない「腎臓」。だが近年、人口の高齢化に伴い、慢性腎臓病から人工透析へと至る患者が急増している。腎臓は、ひとたびその機能が失われると、坂道を転がり落ちるように悪化していく。そうなる前に腎臓の異常を察知し、腎機能の悪化を食い止めるにはどうすればいいのか。重要ポイントをまとめた。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Goodayマイドクター申し込み

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2019 Nikkei Inc. All rights reserved.