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「わたしも、がんでした」

がんになっても、人生を前向きに

病院編 がんと共に生きる、働く時代がやってきます(9)

 堀田 知光=国立がん研究センター理事長

「がんになった=仕事も、人生ももうおしまい」という時代は終わりました。いま、日本では、働きながら治療をするサポートシステムが整えられようとしています。がんと共に生き、働く時代。それを家族、医療のプロ、職場、地域社会など周囲の人みんなが支える時代がやってくるのです。

 そんな時代にがんになったら、本人は、家族は、周囲は、どう考えどう行動すればいいのでしょうか。まず、がん治療と研究に長年携わってきた立場から、現在おすすめできる具体的な対処法を説明します。

 また、がんになっても生きやすい社会にしていくためには、これから何が必要なのでしょうか。いま、私たちが取り組んでいることを紹介しましょう。

自分らしく生きる、そして働く。がんは第2の人生のスタートです

 がんにかかるということは、人生の一大事です。

 ただ、長年、たくさんのがん患者の方と接してきて、つくづく感じることがあります。

 がんにかかったことをきっかけとして、あらためて誰にとっても限りある人生のかけがえのなさ、家族や仕事や仲間のありがたさを実感し、自らの目標を持って生きることができるようになった、とおっしゃる方が少なくないことです。

 がん治療の世界では、よく「QOL」という言葉が登場します。これは、クオリティ・オブ・ライフ、の略です。狭い意味では、治療の現場で、患者さんの治療をその人らしく過ごせるように、なるべく痛みやつらさを和らげながら行おう、というときに使われます。

 かつての医療現場では、とにかく病気を治すのが先決で、そのためには、手術や治療の際の痛みやつらさは我慢してもらおうという発想が主流でした。でも、病に向き合っているその瞬間も、患者さんの大切な人生の一部です。どんな状況であろうとも、痛みやつらさを積極的に和らげ、その人らしい生活を送ることができるようにサポートしよう、ということで、痛みの緩和、精神的なサポート、食事や栄養の相談など、クオリティ・オブ・ライフ=QOLを考慮したさまざまな支援が行われています。

 もっと広い意味でのクオリティ・オブ・ライフ=QOLは、ひとりひとりの人生そのもののかけがえのなさ、大切さを尊重し、高めていくことです。ひたすら治療するだけの「がんと闘う」時代から、「がんと共に生き、がんと共に働く」のは、まさに、がんにかかったご本人の人生の本質そのものを維持し、向上させるという意味があります。

 私たち国立がん研究センターをはじめとするがん専門診療機関でも、「がんと共に生き、働く時代」の実現を、より積極的にサポートしていきます。

国立がん研究センターがん対策情報センター編
『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』 (日経BP社、2013年9月発行)より転載


堀田 知光(ほった ともみつ)さん
国立がん研究センター理事長
堀田 知光(ほった ともみつ)さん 1969年名古屋大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター院長などを歴任後、2012年より現職。厚生労働省「未承認薬使用問題検討会」座長ほかさまざまな政府委員も務め、ドラッグラグ解消やがん登録推進などの課題にも積極的に取り組んでいる。

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中

 医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より

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