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「わたしも、がんでした」

この際だから知っておこう

病院編 がんと共に生きる、働く時代がやってきます(7)

 堀田 知光=国立がん研究センター理事長

「がんになった=仕事も、人生ももうおしまい」という時代は終わりました。いま、日本では、働きながら治療をするサポートシステムが整えられようとしています。がんと共に生き、働く時代。それを家族、医療のプロ、職場、地域社会など周囲の人みんなが支える時代がやってくるのです。

 そんな時代にがんになったら、本人は、家族は、周囲は、どう考えどう行動すればいいのでしょうか。まず、がん治療と研究に長年携わってきた立場から、現在おすすめできる具体的な対処法を説明します。

 また、がんになっても生きやすい社会にしていくためには、これから何が必要なのでしょうか。いま、私たちが取り組んでいることを紹介しましょう。

がん治療の最新情報。がん医療はここまで進んでいる!

 以前は「がん=病院に入院しっぱなしで治療」というイメージがありましたが、がん治療は劇的に変わりつつあります。具体的には、痛くない、体への負担が少ないがん治療が実現するようになってきました。

 

 3大治療(図1)のうちの「手術」はどうでしょう。例えば、胃がん、大腸がん、乳がんは、手術での切除が基本です。しかし、今は切除する範囲をなるべく少なくしたり、胃がんや大腸がんの早期がんであれば、従来のように開腹せずに内視鏡を使って切除するなど、体への負担の少ない手術が増えています。

 「放射線治療」では、がんの部位だけをピンポイントに照射できるように、技術が向上しました。

 「抗がん剤治療」においても、治療効果が高く副作用の少ない抗がん剤の使用や、複数の薬剤を組み合わせることで治療成績を向上させるなど、効果的な治療法が開発されています。

図1◎ がんの3大治療
[画像のクリックで拡大表示]

 いま、注目が集まっているのは「分子標的治療」です。がん細胞が持つ特徴的な物質を分子レベルで捉え、それを標的とした治療を行います。がん以外の正常細胞への影響が比較的少なく、血液・リンパのがんや乳がんなどのがんに対して極めて効果が高い治療ができるようになりました。経口薬として服用可能なものも登場し、点滴ではなく、自宅で負担が少ない形で継続できることも、魅力のひとつです。

 がん医療は日進月歩の勢いで進化しています。治療効果が高まる一方で、体の負担を最小限にするための工夫も進んでいます。だからこそ、「闘病」する期間に残りの人生の多くを費やす、という時代から、病気に向き合いながら治療を継続したり療養生活を送る、つまり、がんと共に生きる、がんと共に働く、という時代に変わったのです。

国立がん研究センターがん対策情報センター編
『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』 (日経BP社、2013年9月発行)より転載


堀田 知光(ほった ともみつ)さん
国立がん研究センター理事長
堀田 知光(ほった ともみつ)さん 1969年名古屋大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター院長などを歴任後、2012年より現職。厚生労働省「未承認薬使用問題検討会」座長ほかさまざまな政府委員も務め、ドラッグラグ解消やがん登録推進などの課題にも積極的に取り組んでいる。

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中

 医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より

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