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「わたしも、がんでした」

がんと「闘う」から、がんをきっかけに「よく生きる」を

家族編 「がんは“生きる”と向き合うプロジェクトです」(2)

 砂田麻美=映画監督

がんは、患者本人だけの病ではありません。家族みんなが当事者になり得ます。患者さんが「がんと共に働き、生きる」ためには、家族の役割分担が欠かせません。では、家族は、どう身内のがんと向き合い、どうサポートすればいいのか。例えば、がんをきっかけに、患者さんが「よく生きる」ためのプロジェクトとして家族みんながチームのように役割分担をしながらサポートする。家族編で登場するのは、ドキュメンタリー映画「エンディングノート」の監督、砂田麻美さんです。映画は、末期がんと診断された砂田さんのお父さまが、死後の後始末について「エンディングノート」を家族にしたためるところから始まります。そんなお父さまと、ご家族やご友人とが一緒に過ごすかけがえのない時間。「死」と向き合うことで、むしろ「生きる」ことを真剣に考える。実行する。大ヒット映画の舞台裏でもある砂田さんとご家族のご経験から、がんと家族と人の死と生について、砂田さんと一緒に考えてみましょう。

ある日、人生に〝限り〞がある、という当たり前の事実を突きつけられて、砂田さんは、「後悔したくない。だからこそベストを尽くそう」と思います。そして、「がんに立ち向かうことは〝死に向かうプロジェクト〞ではなく、本人が、家族が、最期のその日まで〝よく生きる〞ためのプロジェクトなんだろうな」と。

 今にして思うんですが、父と私たち家族が、父のがんに向き合った半年間は、決して「死に立ち向かう」という感じじゃなかったなあ、と。

 がんになった、ということで「死」というのを強烈に意識すると、かえって、毎日毎日をちゃんと生きるってどういうことなんだろう、というのを確かめていくようになっていく。がんと向き合うというのは、例えて言うと、「よく生きる」っていうことを家族総出で挑戦するプロジェクトみたいなものでした。

 がんの告知、特に父がそうだったように「手術不可能です」というステージIVの告知、というのは、戦争の赤紙が突然舞い込んできたみたいな感じだと思うんです。「人生には限りがある」「人はいつか必ず死ぬ」という、すべての人間にとって当たり前の、でも、普段は考えない、考えたくない事実を、いや応なしに突きつけられるわけで。

 父ががんを告知されたことで、父はもちろんですが、私たち家族も「死」というものを強烈に自覚させられました。同時に生きることの価値についても、はっきり考えるようになったんです。

 とにかく後悔だけは絶対したくない。できることは、全部やろう。そんな気持ちが、私たち家族と、そしてもちろん父のモチベーションに、いつしかなっていきました。

 そうなると、がんへの向き合い方もいろいろ変わってくるんです。

 がんになってしまうと、どうしても闘病と治療だけがすべてのような気がしてしまうんですが、がんにかかった父からすれば、闘病と治療だけが自分の人生の残された時間じゃないわけです。今はまだちゃんと歩けるし、考えることも、ご飯だって食べられる。

 だったら、治療以外の時間を、「よりよく生きる」ために使うほかないんだと。だからよく父は「QOL(Qualityoflife)」という言葉を口にしていました。

 そうすると、私たち家族にとっても父と過ごす一日一日の時間がとても貴重に思えてくるんですね。むだな時間なんかないなあ、と思えてくるんです。

 限りある人生をどう過ごすか。いまできること、いまやっておきたいことは何だろう。いま会っておきたいひとは誰だろう。とにかく、できること、ぜんぶやってあげたいな、って。家族みんなでそう思って、いろいろ試行錯誤していると、ああ、家族ってひとつの共同体なんだなあ、と自覚しました。

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