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「わたしも、がんでした」

がんと「闘う」から、がんをきっかけに「よく生きる」を

家族編 「がんは“生きる”と向き合うプロジェクトです」(2)

 砂田麻美=映画監督

誰かの死に直面しないと、人間、ほんとの意味では気づかない

 私自身もいろんなことをいやでも考えさせられました。父ががんになる前と後では、考え方もいつのまにかずいぶん変わったなあ、と思うところがいくつもあります。

 人の人生っていつか終わっちゃう、限りのあるものなんだ、っていう、当たり前のことを、自分ごととして突きつけられた。

 人間ひとりの人生なんてせいぜい70年とか80年とかで、地球ができて生命が誕生して数十億年だかの気が遠くなるくらい長い時間と比べると、ほんとに一瞬、あっという間でしかないのに、なんで生きているのってこんなにしんどかったりするんだろう、人間の生きている意味って何なんだ、って思ったりするわけです。

 でも、そこまで考えているうちに、私なりに思い至ったりするんですね。

 どうせ宇宙から見れば、人の一生なんて一瞬なんだから、「人生の意味」なんかを考えたり悩んだってしょうがない、とにかく自分の最期の日まで、ちゃんと生きてればいいんだろうな、きっと…みたいな感じに。同時に人ってただそこにいるだけで、別の誰かになにかしらの影響を及ぼしている、ってことにもあらためて気づいたんです。もちろんいい影響もあるし、悪い影響もある。だったら、自分が生きている限りは、自分とちょっとでも関係している周りの人に、なんでもいいから、いい影響を少しでも手渡せるといい。それがちゃんと生きる、よく生きるってことかな、と。

 父のがんに寄り添っていたら、本当に普段考えないことを考えさせられたんです。誰かの死に直面しないと、人間、ほんとの意味では気づかないし、考えないものなんですね。

砂田麻美(すなだ まみ)さん
映画監督
砂田麻美(すなだ まみ)さん 1978年生まれ。慶應義塾大学在学中からドキュメンタリーを学び、映画製作に携わる。卒業後はフリーの監督助手として、河瀨直美、岩井俊二、是枝裕和らの製作現場に参加。2009年にがん告知を受けた父の最期にカメラを向けたドキュメンタリー映画『エンディングノート』を製作。2011年に一般公開され、監督デビュー。同作は高い評価を受け、第52回日本映画監督協会新人賞・第36回報知映画賞新人賞・芸術選奨文部科学大臣新人賞他多数受賞。2013年にはスタジオジブリを題材にした『夢と狂気の王国』を監督。第39回トロント国際映画祭正式出品の他、香港・北米で一般劇場公開された。小説に『音のない花火』(ポプラ社刊)。

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中

 医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より

>>詳しくはこちら(Amazonのページにジャンプします)

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