でも、当人でもないのにショックを受けたまま、というわけにはいかないし、なんとかベストを尽くしたいと思いましたから、そのあと徐々に、家族それぞれが、取りあえずできることをやろう、という雰囲気になっていきました。
まずは、とにかくがんという病気について徹底的に調べよう、それでちゃんと知ろう、と。本を買ったり、インターネットを検索したりしながら、がんの状況、病院の選択、治療法の種類などなど、がんに対する情報を集めていきました。こうやっていろいろ調べるのは、もっぱら私の役目でしたね。これはもう性格で、「知らない」「わからない」というのがいちばん怖かったんです。セカンドオピニオンの結果を聞きに行くときも、試験勉強みたいに、ノートに必要事項をびっしり書き出して、お医者さまがお話しされている内容がどの項目にどう対応しているのか、ひとつひとつチェックしていました。
私にしても、母にしても、姉にしても、海外にいる兄にしても、それぞれ性格や得意なことは違うわけで、それぞれの性格の素直な方向で、がんにかかった父をフォローするしかない。逆にそうしていくしかなかったんだなと、振り返ってみて、そう感じます。
映画監督

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中
医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より
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