前回に引き続き、「緩和ケア」の基礎知識を埼玉県立がんセンター緩和ケア科科長の余宮きのみ先生に聞きました。緩和ケアはがんと診断されたときから受けることができる全人的な治療です。今回は、緩和ケアを受けるときのポイントについて解説します。自身の状態をうまく主治医に伝えられるかがカギとなるようです。
緩和ケアを受けるときのポイント

がんにおける緩和ケアは、がんと診断されたときから受けることが推奨されています(前回記事:「元気なうちに知っておきたい『緩和ケア』」参照)。しかし、がんが疑われて精密検査を受け、診断を待つ間などにも苦痛や不安を感じたら、主治医に相談するといいでしょう。
緩和ケアチームによる専門的な緩和ケアでは、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペイン(霊的な苦痛:生きる意味の喪失、周囲に迷惑をかけるなど)といった多面的な苦痛に対して、専門家が一つひとつその原因を探り、可能な限り苦痛を和らげ、患者さんが自分らしく過ごせるようにアプローチしていきます。
米国の医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)」に掲載された論文(*)では、症状緩和やストレス対処の援助、病状や予後について話し合うといった緩和ケアを含めた包括的な医療を受けたがん患者さんの方が、がん治療のみに専念した患者さんよりも、QOL(生活の質)が高く、抑うつ、身体症状が軽減され、余命も2.7カ月延長したと報告されています。
がんは様々な苦痛やつらさをともなう病気です。自分1人だけで対処するのは難しいことも多いものです。苦痛やつらさ、困っていることなどを抱え込まずに、早期から主治医や看護師、緩和ケアチームに相談をすることが、療養生活の質を高めることにつながります。緩和ケアを効果的に受けるためには、とくに次の3つのポイントを心得ておくといいでしょう。
*Temel JS, et al. N Engl J Med 2010;363:733-742.