私たちががんになる可能性はどれくらいあるのでしょうか。また、なりやすいのはどんながん? 今回は、日本人のがんの傾向や現状について、国立がん研究センターがん対策情報センター・センター長の若尾文彦先生に聞きました。
がんの罹患率は男女ともに増加
国立がん研究センターがん対策情報センターが発表している最新のデータ(2010年)によると、日本では男性の60%・女性の45%、つまり、日本人の2人に1人が、一生のうちに何らかのがんになるといわれています。がんは私たちにとって、それだけ身近な病気となっています。
がんになる人が増えている主な要因には、平均寿命が延び、高齢化が進んでいることが挙げられます。がんは、細胞分裂の際に遺伝子が正しくコピーされず、異常な細胞が増えていくことによってできていきます(ホームルーム1:「がん」ってどんな病気?)。通常、私たちの体には、こうした異常な細胞を排除したり、異常な細胞のもととなる遺伝子の傷を修復したりする「免疫」という仕組みがあります。しかし、高齢になるとともに免疫機能は低下するため、がんになる人が増えていくのです。
2010年の年齢階級別がん罹患率(人口10万人のうち何人ががんと診断されるか:図1)を見ると、男女ともに50代になる頃から罹患率が高くなり、高齢になるほど増えていきます。
また、年齢調整罹患率(*1)の推移をみると(図2)、1985年以降、罹患率は男女ともになだらかに増加しているのが分かります。食生活を含む、生活習慣の欧米化の影響が考えられています。
では、どんながんになる人が多いのか、増えているがん、減っているがんを見ていきましょう。