「やさしいがんの学校」の6時間目は「子宮体がん」です。同じ子宮がんでも、子宮頸がんは若い世代で罹患率が増加しているのに対し、子宮体がんはほとんどの世代で増加傾向が見られます。女性ホルモンの乱れが原因と考えられていて、初期の段階から不正出血などの自覚症状があるのが特徴です。サインを見逃さず受診し初期で診断されれば、ほぼ根治できるがんです。横浜市立大学大学院医学研究科がん総合医科学教授の宮城悦子先生に、子宮体がんの基礎知識を聞きました。
子宮体がんとは?

子宮がんは、がんが発生する部位によって、2種類に分けられます。子宮の入り口に近い部位(子宮頸部)に発症するのが子宮頸がん、妊娠中に胎児を育成する子宮体部に発症するのが子宮体がんです。発症原因や治療法が異なるため、別の病気と考えられます。今回は子宮体がんについて解説します。
子宮体がんとして分類される腫瘍には、2つの異なった発生部位から生じる悪性腫瘍があります。子宮体部の壁は、内側から内膜、筋層、漿膜(しょうまく)で構成されていて、子宮内膜から発生するものが「子宮内膜がん」、その他の筋層や間質細胞から発生するものが「子宮肉腫」と呼ばれます。子宮内膜がんが子宮体がんの95%以上を占めていて、子宮肉腫は非常にまれです。そのため、子宮体がんという場合は、子宮内膜がんを指すのが一般的です。ここでも、子宮内膜がんを子宮体がんとして解説していきます。
女性ホルモンのバランスの乱れが主な要因に
子宮体がんを発症する原因はまだ明らかにはなっていませんが、女性ホルモンのバランスの乱れが関係するものが多いと考えられています。早期から不正出血などの自覚症状が見られるため、放置せずに婦人科を受診すれば、早期発見・治療により治癒しやすい特徴があります。
卵巣から分泌される女性ホルモンには、月経周期の前半に分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と、後半に分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つがあります。エストロゲンには子宮内膜を増殖させる働きがあり、プロゲステロンには子宮内膜の増殖を抑える働きがあります。この2つの女性ホルモンがバランスよく分泌されていると、月経周期が安定し排卵が起こります。
ところが、卵巣の働きが悪かったり、閉経が近くなったりすると、女性ホルモンのバランスが乱れ、排卵がうまく起こらなくなることがあります。そうなると、本来は排卵後に子宮内膜の増殖を抑えるプロゲステロンの分泌が減少し、一方のエストロゲンが相対的に過剰になり、子宮内膜が異常に増殖します。このような状態が長期間続くことが、子宮体がんの発生の要因になるといわれています。子宮体がんはこうした女性ホルモンのバランスが崩れやすい、閉経前後の50代~60代に多く見られます。
それに加え、近年では晩婚化、晩産化などの影響で、女性1人当たりの妊娠・出産回数が減っているため、エストロゲンにさらされる時期が長くなる傾向があります。妊娠中、授乳中は大量のプロゲステロンが分泌されるため、エストロゲンの分泌が抑えられているのです。そのため、子宮体がんは40代を中心とした閉経前の年代にも増えていて、若年化は今後も続くと予測されます。
また、ホルモンの関与が乏しく、比較的高齢で発症してくるタイプの子宮体がんの存在も知られており、このタイプは進行が速く難治性という特徴があります。