「やさしいがんの学校」の15時間目は「腎がん」です。腎がんは50代後半から70代にかけて罹患率が高まり、男性に多く発症する傾向があります。しかし、若年層で発症するケースもあり、先日も、お笑い芸人のはんにゃ・川島章良さんが腎がんの手術を受けていたことを明かしました。腎がんの基礎知識を、東京医科歯科大学特任教授の木原和徳先生、同大学院腎泌尿器外科学分野准教授の藤井靖久先生に聞きました。
腎がんとは?
腎臓は、腰の位置の背骨の両側に左右1つずつある、握りこぶしほどの大きさの臓器です。腎がんは、腎実質(腎皮質と腎髄質)から発生する「腎細胞がん」と、腎臓で作られた尿が集まる通路(腎盂:じんう)から発生する「腎盂がん」に大別され、それぞれ性質も治療法も異なります。
ただ、成人の腎がんは腎細胞がんが約9割を占めるため、腎がんという場合は、腎細胞がんを指すことが一般的です。さらに、腎細胞がんは約20種のタイプに分けられますが、淡明細胞型と呼ばれるものが圧倒的に多く全体の7~8割となっています。ここでは淡明細胞型腎細胞がんを腎がんとして解説していきます。
70代が発症のピーク
腎がんは50代後半から罹患率が高まり、70代が発症のピークです。また、女性よりも男性の方が2~3倍多く発症しています。罹患率は1980年頃から増加しており、その背景には食生活の欧米化(乳製品や肉の過剰摂取など)や人口の高齢化、画像診断の普及により偶然発見されるケースが増えたことなどが関係していると考えられます。
画像検査で偶然見つかることも
腎がんが発生する直接的な原因はまだ明らかにはなっていませんが、肥満や喫煙、高血圧などが危険因子として指摘されています。また、透析を長期間受けている方では、罹患率が高まります。
初期の段階では症状が出にくく、近年は検診や人間ドックなどの超音波検査やCT検査で偶然見つかるケースが多くなっています。がんが進行すると、目で見て分かる血尿、脇腹や背部の痛み、腹部のしこりといった症状が表れることがあります。そのほか、食欲不振や体重減少、倦怠感、原因不明の発熱といった全身症状が出ることもあります。
また、発見時にはすでに肺や骨などに転移しているケースもあり、その場合には、肺転移なら咳や痰、骨転移なら骨の痛みといった転移部位の症状が出ることもあります。