「やさしいがんの学校」の5・6時間目は「子宮がん」です。子宮がんには「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2種類があり、同じ子宮がんでも性質がまったく異なります。今回は、若年層で発症が増加している子宮頸がんについて、横浜市立大学大学院医学研究科がん総合医科学教授の宮城悦子先生に聞きました。
子宮頸がんとは?

子宮がんは、がんが発生する部位によって、2種類に分けられます。子宮の入り口に近い部位(子宮頸部)に発症するのが子宮頸がん、妊娠中に胎児を育成する子宮体部に発症するのが子宮体がんです。発症原因や治療法が異なるため、別の病気と考えられます。今回は子宮頸がんについて解説します。
子宮頸がんは20歳代後半から40歳代後半の女性が罹患しやすいがんですが、早期に発見すれば治癒しやすいのが特徴です。主な原因は性交で感染する「ヒトパピローマウイルス(HPV : Human Papillomavirus )」と考えられています。
子宮頸がんは、2つのタイプに大別されます。子宮頸部は2種類の上皮細胞に覆われていますが、膣に近い部分を覆っている扁平上皮細胞の特徴をもつ場合は「扁平上皮がん」、子宮の奥(子宮体部)に近い部分を覆っている腺上皮の特徴をもつ場合は「腺がん」と呼ばれます。その両方の性質を持つ「腺扁平上皮がん」もあります。子宮頸がんの約80%は、扁平上皮がんとなっています。
原因の99%はHPV感染
子宮頸がんの99%の原因は、性交で感染するHPVによるものです。HPV自体はごくありふれたウイルスで、性交経験のある健康な女性の10~30%が保有しているといわれており、80%以上の男女が一生のうちに1度はHPVに感染すると推計されています。子宮頸がんの罹患者数のピークは30代後半から40代ですが、近年では20代にも急増しています(20代での急増の背景は最終ページの別掲記事を参照)。
HPVには100種類以上のタイプ(型)があり、そのうち、子宮頸がんの発生に関与するタイプは「高リスク型」と呼ばれます。高リスク型には16型、18型、33型、52型など約15種類がありますが、子宮頸がんを発症した人の約60~70%は16型と18型が原因となっています。
性交経験のある女性なら誰もが子宮頸がんになる可能性
HPVに感染しても、すべての人が子宮頸がんを発症するわけではありません。HPVの約90%は感染後、免疫機能によって自然に排除されていきます。何らかの理由でHPVが自然に排除されずに感染が持続した場合、その約1割に子宮頸部の異形成(まだがんではない前がん状態)が起こります。そして、さらにその一部が子宮頸がんへと進行していきます。子宮頸がんを発症するのは、HPV感染者の1%未満と考えられていますが、前がん病変の異形成はとても数が多い疾患です。したがって、1度でも性交経験のある女性なら、誰もが子宮頸がんになる可能性があるといえます。
子宮頸がんの初期の段階では、自覚症状がほとんどありません。そのため、早期発見には、子宮がん検診を定期的に受けることが重要です。また、喫煙がHPVの自然排除を妨げることが報告されています。禁煙が子宮頸がんの予防にもつながるのです。
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