「やさしいがんの学校」の14時間目は「食道がん」です。がんの中でも手術が大がかりといわれています。しかし、がんが食道の最も内側の粘膜層にとどまる早期で発見できれば、内視鏡による負担の少ない治療での完治が期待できます。食道がんの基礎知識を、昭和大学江東豊洲病院消化器センター長の井上晴洋先生に聞きました。
食道がんとは?
食道は、のどと胃をつなぐ管状の臓器です。食道の壁は飲食物が接する側(内側)から外側に向かって「粘膜層」(さらに、粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板に分けられる)「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」の4層構造になっており、食道がんは主に、内側の粘膜層から発生します。
食道がんは、大きく2種類に分けられます。
- ・扁平上皮がん
扁平上皮細胞と呼ばれる、食道の内側にある薄くて平坦な細胞に発生するがんです。食道がんの9割以上を占めます。
- ・腺がん
粘膜の上には粘液などの液体を分泌する腺(せん)があり、その腺細胞に発生します。
日本人では扁平上皮がんが9割以上を占めるため、食道がんといえば扁平上皮がんを指すことが一般的です。ここでも扁平上皮がんを食道がんとして解説していきます。
食道がんの多くは、食道の粘膜が刺激を受け続けたり、炎症を繰り返すことで遺伝子に変化(異形成)が起こり、細胞ががん化して生じます。多くは飲食物が通る粘膜層側から発生し、周囲の組織を破壊しながら上下左右へと広がっていきます。
2011年のがん罹患率(1年間に人口10万人当たり何例ががんと診断されるか)は男性31.7%、女性は5.2%です。男性の方が罹患率が高いといえます。
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