「やさしいがんの学校」の3時間目は「大腸がん」です。近年、罹患率は横ばい傾向ではあるものの、年間10万人以上が大腸がんと診断され、大腸がんで亡くなる人は年間4万人を超えています。そんな大腸がんの知っておきたい基礎知識を、国立がん研究センター中央病院大腸外科・科長の金光幸秀先生にうかがいました。
大腸がんとは?

大腸は食べ物の消化や吸収を行う消化器官の最終部分で、小腸と肛門(肛門管)の間にあります。小腸側から盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸(直腸S状部・上部・下部)と続き、その全長は2m程度になります。
この大腸に発生した悪性腫瘍が、大腸がんです。腺腫という良性の腫瘍(ポリープ)ががんになる場合と、正常な細胞から直接がんが発生する場合とがあり、後者はデノボがんと呼ばれています(デノボは「初めから・新たに」を表すラテン語)。
大腸がんは発生部位によって、図1に示したように呼び名が変わります。大腸がんで最も多いのは直腸がんとS状結腸がんで、この2つで全体の半数以上を占めています。
一般に、自分から見た大腸の右側(盲腸、上行結腸、横行結腸)に発生したがんでは、自覚症状が起こりにくく、慢性的な貧血や腹部のしこりに気づいて受診したことがきっかけで発見されるケースが多く見られます。血便などでは確認しづらいのは、大腸の右側では、便がまだ水分の多い状態で運ばれてくるため、がんができていても通過しやすくなっている上、肛門にいたるまでに距離があるので、がんによる出血が便に混ざり、わかりにくくなってしまうためです。
一方、大腸の左側(下行結腸、S状結腸、直腸)に発生したがんでは、下血や血便、便秘や下痢、便が細くなるといった症状が現れやすくなります。