「やさしいがんの学校」の2時間目は「肺がん」です。肺がんは現在、日本で最も死亡数が多いがん。そんな肺がんの原因や診断・治療方法などを、東京医科大学病院 呼吸器・甲状腺外科主任教授の池田徳彦先生にうかがいました。
肺がんとは?

肺は胸部の左右にそれぞれあり、空気中の酸素を体内に取り入れる働きを持つ臓器です。口や鼻から吸った空気は、気管から枝分かれした気管支を通って、肺に入ります。肺の内部ではさらに気管支が分岐を繰り返して奥へとのび、その先には肺胞という小さな袋状の組織があります。肺胞の表面は無数の毛細血管に覆われていて、空気中の酸素と血液中の二酸化炭素を交換しています。
この気管、気管支、肺胞の細胞の一部が、何らかの原因でがん化したものが「肺がん」です。部位によって分類されていて、肺の入り口近くの太い気管支にできる「中心型肺がん」と、肺の奥の隅の方にできる「末梢型肺がん」に分けられます。
また、がん細胞の組織の特徴によって、「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」の4つに大別できます。
肺がんで最も多いのは腺がんで、肺の奥(末端)の方に多く発生します。扁平上皮がんは、太い気管支に発生しやすいタイプです。大細胞がんは末端近くに病巣ができて、細胞が大きいのが特徴です。進行が速く、転移しやすい肺がんです。小細胞がんは気管支近くの肺門部で病巣が見つかります。大細胞がん以上に増殖が速く、再発や転移しやすいがんです。
肺がんの症状は、がんができる部位によって異なります。
太い気管支にできる中心型肺がんの場合は、比較的早い時期から咳や痰、血痰などの症状が出ます。肺の隅の方にできる末梢型肺がんの場合は、中心型肺がんに比べて自覚症状が出にくく、検診などで見つかるケースが多くなっています。
肺がんの最も大きな原因となるのが、喫煙です。喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者は約5倍がんになりやすいといわれています。また、自身は喫煙しなくても、副流煙(周囲の喫煙者のたばこの煙)を吸う受動喫煙のある人は、ない人の1.2倍程度、がんになるリスクが高まります。ただし、大気汚染などの要因も影響するため、たばこを吸わない人でも肺がんを発症することがあります。
この記事の概要
