昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。

メタボ対策と言えば、食事と運動は両輪。“連理の枝”、はたまた“比翼の鳥”であり、どちらが傾いても、バランスを失って、こける。
メタボに限らず、運動習慣は、あらゆる意味で体に良い。運動すれば、心臓も肝臓も代謝が改善される。また、運動しないと骨が脆くなるのは、無重力状態に置かれた宇宙飛行士の骨量が減ることでも明らかだ。骨に適度に負荷をかけ、目減りを最小限に食い止めたい。もちろん、骨だけではなく筋肉だって保たなくてはいけない。
このほかにも、運動習慣のある人は認知症になりにくい、運動をしない人に比べて、がんになる割合が低い、といったデータもある。一方で、1日3時間以上テレビを見ているなど、身体活動が不活発な人は短命らしい。
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センターの松本秀男教授は、「運動が健康に良いといことを示す研究が多いが、『運動さえすれば誰でも健康になれる』と結論付けるのはやや早計だ。そもそも健康だから運動ができている可能性もある」と述べる。そう、「運動できること」は、健康のバロメーターでもあると考えてもいい。
人間だって“動物”だ。体を動かして食物を手に入れ、外敵から身を守るのは本能でもある。この能力が失われれば、生存にも関わってくる。四肢を自由に動かせるようになった人間が、その能力を維持するためのある程度の身体活動、すなわち運動は、生存のために不可欠だとも言える。
嫌々始めた運動は絶対に長続きしない
というわけで、本連載では、ほぼ全員が自転車通勤という慶應病院スポーツ医学総合センターの「チーム松本」の精鋭が、ウォーキング、ジョギング、自転車、水泳、筋トレ、ゴルフ…といった様々な運動種目のポイントと効用を講釈してきたのだが(詳しくは下記バックナンバーを参照)、何か“食いつけるもの”は見つかっただろうか。