昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
“うまい、安い、早い”の外食チェーンではないが、“簡単、うまい、楽しい”でないと、糖尿病の食事療法はやっていけない。糖尿病になったら、あれもダメ、これもダメというのでは、食べる喜びが失われるし、長続きしそうもない。
もっとも、食事療法は運動療法と並んで、糖尿病の治療の柱なので、基本は押さえておいたほうがいい。肥満やメタボは明らかに、糖尿病の発症や進行のリスクファクターになる。そもそもは、エネルギーのインとアウトのバランスが悪いから、肥満やメタボになる。さらに、2型糖尿病になりやすい体質を持つ人(前回記事「なぜ日本人には『やせの糖尿病』が多いのか?」参照)は、エネルギーの過剰摂取によって、血糖調節ホルモン、インスリンの効きが悪くなっている。
このため、2型糖尿病やその予備軍と診断された人が、まず行わなければならないことは、摂取エネルギーの制限だ。1日の総摂取エネルギーを、一般の人より2~3割減らしつつも、各栄養素のバランスの取れた配分をしなくてはならない。
総摂取エネルギーの決定方法は、下表(*1)を参考に、患者の日常的な活動量(労作量)や肥満度を考慮して、体重1㎏当たり25~35kcalとする。一方、三大栄養素のエネルギー比率は、たんぱく質15~20%、糖質50~60%とし、残りを脂肪とする。
1.標準体重を決める。
標準体重(kg)=身長(m)2×22
2.身体活動量を決める。
(1)軽い労作(デスクワークが主な人、主婦など) 20~25kcal/kg(標準体重)
(2)普通の労作(立ち仕事が多い職業) 30~35kcal/kg(標準体重)
(3)重い労作(力仕事が多い職業) 35~ kcal/kg(標準体重)
【ただし高齢者や肥満者では低い値、低年齢者ややせた人では高い値をとる】
3. 摂取エネルギー(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量(kcal)
一般に1日
男性:1400~1800kcal
女性:1200~1600kcal
妊娠、授乳期:その付加量を加算する。
しかし、これはあくまでも目安で、関西電力病院院長の清野裕氏は、「身体活動、血糖のコントロールの状態は1人ひとり異なるので、個別のリスクファクターを考慮しつつ、それに合わせていくのが重要だ。また、一律にこれを食べれば良い、これを食べてはダメというものはない」と語る。
第2章(「ヒトは食べたパンからできている」)で紹介したカロリーを抑える食事も参考にしつつ、1日3食規則正しく、ゆっくり噛んで食べる、という当たり前の工夫が必要なのは言うまでもない。