昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。

メタボリックシンドロームと皮膚の病気の関連、と言われてもにわかにはピンとこないが、全身病である以上、皮膚もまた少なからず影響を受ける。
内臓脂肪からは、アディポサイトカインという生理活性物質が分泌される。アディポサイトカインは、本来は、脂質や糖の代謝を円滑にする働きをしてくれる物質だが、メタボになって内臓脂肪が過剰に貯まってくると、その分泌異常が起こる。これが、糖尿病、高血圧、脂質異常症を引き起こし、動脈硬化を促進する。加えて、皮膚にも悪さをするのだ。とりわけ、TNF-αに代表される悪玉のアディポサイトカインは、皮膚に炎症を起こしたり、角質化を促進させたりすることが知られている。
肥満と関連が深い「乾癬」という皮膚病
メタボととりわけ関連の深い皮膚の病気としては、乾癬が知られている。高知大学医学部皮膚科学講座教授の佐野栄紀氏は、「昔から、肥満の人には乾癬が多い傾向があった。実際に、乾癬患者のアディポネクチン(善玉サイトカイン)を測定してみたところ、健常な人より低かった」と語る。
「乾癬」。ちょっと聞き慣れない病名かもしれないが、アトピー性皮膚炎と並び、難治性の慢性皮膚疾患で、軽い人まで含めると患者数の割合は500人に1~2人と、決して稀な病気ではない。欧米人は日本人の10倍以上の頻度でかかることが知られており、食生活の欧米化などに伴って、日本人でも増加傾向にある。
発症原因ははっきり分かっていないが、生体を守る免疫機構が自分の体を攻撃する自己免疫疾患という側面もある。そして、乾癬は、肥満やメタボと相互に影響を及ぼしながら、悪玉サイトカインの働きによっても悪化していく。
