昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
メタボと診断されたら「1に運動、2に食事」。で、ここで読者の皆さんに質問。「ゴルフはメタボ対策に有効な運動なのか?」
「ゴルフは娯楽か、スポーツか?」というテーマは、昨年、国会で議論の対象になったことがある。ゴルフ場利用税の存廃をめぐっての論争においてだ。ゴルフ愛好者は減少傾向にあるとはいえ、2014年において、日本のゴルフ人口(1年に1回以上プレーする人)は720万人とされ、特に中高齢者では最も人気の高いスポーツの一つだ(*1)。
やりようによってはゴルフもメタボ対策になる
電動カートで移動し、休憩時間に酒を飲み、ラウンドが終わればまた飲食をして、消費したカロリーをしっかり取り戻す―そんなゴルファーは少なくない。だが、「ゴルフは娯楽か、スポーツか?」との問いに対し、「運動強度や頻度、時間を意識すれば、メタボ対策にも十分なり得る」と答えるのは、慶應義塾大学スポーツ医学総合センター助教の新庄琢磨氏だ。

ゴルフの運動強度は、カートを使ってラウンドした場合で3.5Mets(*2)。速歩のウォーキングや水中運動(4Mets)より低め、ジョギング(7Mets)の半分だが、カートを使わず、クラブを自分で持って歩くと4.3Metsに上がる。ゴルフで運動効果を得たいと思うなら、まずはカートを使わず、自分の足でラウンドすることだ。さらに、新庄氏は、「ウォーキングの運動効果をより高めるために、歩く姿勢を意識し、大股で早足で歩くことを心掛けたい」と語る(参考記事「1日プラス1000歩、10分のウォーキングから始めよう」)。
細切れのウォーキングではあっても、18ホールのゴルフコースをラウンドすれば、約6km。1万歩は軽く超え、2時間は歩いている計算になる。アップダウンのあるコースならより効果的だ。
上記の計算は、パーイーブン(合計打数が規定打数と同じ)で回れるような巧者を標準としているので、ありがたいことに(?)、初心者や“下手の横好き”の場合には、さらに歩く距離も歩数も稼げるではないか。規定打数をはるかに超える「大叩き」をすれば、ラウンドで1万5000歩以上歩けることになる。
1ラウンドで300~500kcalは消費できているはずにもかかわらず、なかなかゴルフでは減量効果を出し切れないことが多いのには、理由がある。昼食や打ち上げで、過剰に飲み食いしてしまうからだ。
午前中にハーフを回って、昼食と景気付けのビールで帳消しにし、さらにラウンドを終えて、グルメ三昧では、あっさりカロリー収支が逆転する。ゴルフのラウンドには、付き合いや社交の要素も無視できないが、せめて収支トントンを心掛けよう。
*2 Metsは運動強度の単位で、安静時を1とした場合、その運動は何倍のエネルギーを消費するかを表す。