昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
口を通った食物はすべて、肝臓で「代謝」される。代謝とは、消化管(小腸)から吸収された食物に含まれる、糖質、脂質、蛋白質などの栄養素を、我々の体が利用できるような物質へと作り変えることで、その後、全身に送り出されている。
人体で最大の“代謝工場”であり、“貯蔵庫”でもある肝臓。そこに脂肪が貯め込まれるのは、過食や大量飲酒によって、中性脂肪が多く作られすぎて、運び出す能力が落ちてしまうからだ。
食生活を見直せば肝臓の脂肪化は改善する
アルコール多飲者を除けば、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患;NAFLD)の本質は、ほぼメタボに同じ。そこから、肝炎(非アルコール性脂肪肝炎;NASH)→肝硬変→肝がんと進むのは阻止しなくてはならず、まだ後戻りできるうちに、食生活を徹底的に見直したほうがいい。食生活の改善は、同時に、動脈硬化の進展の結果引き起こされる心筋梗塞などによる突然死の予防にもつながる。
減量に励むことで、肝機能検査の値や、超音波検査の所見などが改善し、肝炎の進行が止まるという報告もされている(*1)。脂肪が貯まり白くキラキラと輝いていた肝臓も、かなり元通りになる。広島大学総合内科・総合診療科教授の田妻進氏は、「内臓肥満を伴わない脂肪肝の人も、“食の質”に問題がある可能性が高く、食生活の改善に努めれば、肝臓の脂肪化が改善するはずだ」と語る。
糖質・脂質は過剰に注意、魚や食物繊維は不足に注意
日本消化器病学会編『NAFLD/NASH診療ガイドライン2014』では、NASH/NAFLDにとって、過剰摂取が危険因子となるものとして、総カロリー、糖質(炭水化物)、ソフトドリンク(糖質、果糖)、 肉類、脂質(特に飽和脂肪酸、ω-6脂肪酸、コレステロール)を挙げている。
一方、摂取不足が危険因子となるものも、いくつか挙げられている。魚類、ω-3脂肪酸、食物繊維だ。いずれも、伝統的な日本の食生活では、過不足が問題にならなかったものばかりだ。
食生活と関連したNAFLDの危険因子
- 総カロリー、糖質(炭水化物)、ソフトドリンク(糖質、果糖)、 肉類、脂質(特に飽和脂肪酸、ω-6 脂肪酸、コレステロール)
- 魚類、ω-3 脂肪酸、食物繊維
摂取過剰が危険因子と想定されるもの
摂取不足が危険因子と想定されるもの
(日本消化器病学会編『NAFLD/NASH診療ガイドライン2014』を基に作成)
栄養素それぞれについて、7つの改善のポイントを示したい。
この記事の概要
