昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
先日、約20年ぶりにベトナムを訪れた。街を歩いてみると、市民の移動手段が自転車からオートバイ、オートバイから自動車へとモータリゼーションが加速しており、ちょっと残念だった。オートバイや自動車に乗るだけでは、ほとんど運動にならない。市民は、モータリゼーションによって、日々の運動の機会を逸してしまったかもしれない。
足腰への負担が極めて少ない運動
走る速度によっても変わってくるが、サイクリングは、ランニングや水泳とさほど運動量(消費カロリー)やMets(運動強度)は変わらないながらも、メタボな人も比較的始めやすい運動だ。その理由は、足腰への負担が極めて少ないこと。
ランニング中は、膝に体重の3倍の荷重がかかるが、自転車はサドル、ペダル、ハンドルが体重を受け止めてくれる。競輪選手のように全速力で踏み込むことはせずに、無理のないスピードで走れば、息切れをしたり心拍数が上がりすぎたりすることもないし、それほど汗まみれにもならないだろう。
長い時間続けやすく、長い距離を移動できるのも、サイクリングの大きなメリットの1つだ。ただし、普段から膝に不調があり曲げるのが難しい、痛みが出やすい、といった場合は、ペダルをこぐと症状が悪化する恐れがある。プールの中でのウォーキングなど、より負担がかからない運動を考えたほうがいい。
少ない負荷で全身運動を目指すならロードバイク

初心者がサイクリングを始める場合、まず、自転車選びがポイントになる。いわゆるママチャリのような日常生活用車種(シティーサイクル)でも、それなりに運動効果はある。しかしながら、舗装道路での高速走行を目的に設計されたロードバイクの方が、ママチャリより車体が軽いので脚への負荷を抑えられ、長時間続けやすい。やや前傾姿勢になるが、サドルだけでなく、ハンドルでも体重を支えるため、全身の運動になる。
いきなりロードバイクから入るのは敷居が高いという人であれば、シティサイクルとロードバイクの中間に位置付けられるクロスバイクや、段差に強くコンパクトなマウンテンバイクでもいいだろう。一方、シティサイクルによくある電動アシスト付き自転車の場合、運動効果は、普通の自転車に比べて、2分の1から3分の1になるといわれている。もちろんやらないよりは、やったほうがいいのだが。