昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
日本では、戦前は痛風になる人はまれだったが、現代は、誰もが高尿酸血症・痛風を発症しかねない。過食やメタボと高尿酸血症・痛風のただならぬ関係性については前回と前々回に詳述したが(「メタボの“犯人”の1人? 痛風・高尿酸血症の正体」、「尿酸値を下げればメタボは予防できる?」)、高尿酸血症・痛風の患者ほとんどが過食傾向にある。その代表例は「酒好き・肉好きの傾向がある中高年男性」といっても過言ではないかもしれない。
高尿酸血症・痛風患者の食習慣に特徴的なこととして、(1)動物性食品が中心の高蛋白・高脂肪食、(2)珍味を肴に毎晩過量の飲酒、(3)食抜き・まとめ食いなどの不規則な食生活、(4)野菜嫌い、といった傾向が指摘されている。
「ああ、耳が痛い」という、そこのあなた。それだけ、改善の余地があると考えればいい。東京慈恵会医科大学名誉教授で日本痛風・核酸代謝学会理事長の細谷龍男氏は、高尿酸血症・痛風の食生活改善のポイントとして、(1)適正なエネルギー摂取、(2)プリン体・アルコール・果糖の過剰摂取制限、(3)十分な飲水、の3点を挙げる。
適正なエネルギー摂取
「尿酸値が高い」となれば、どうしても、尿酸の原料となるプリン体(詳しくは後述)に目が向きがちだが、まず考えなければならないのは、プリン体よりも、総エネルギー量だ。とりわけ、メタボとの関連が強い人ほど、減量に励んで適正体重を維持すれば、尿酸値は下がって痛風のリスクも低下することが期待できる。
大食い・早食い・不規則な食生活を改めるだけでも、減量にはかなり効果的だ。肉類などに多く含まれるプリン体の過剰摂取を避けるため、かつては低蛋白・高炭水化物食が推奨されたことがあったが、糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)はむしろ肥満を助長することになるので評価が逆転している。栄養のバランスを失しないように気をつけたい。
プリン体を控える

プリン(purine)体は、甘美なスイーツのプリン(pudding)とは、何の関係もない。プリンの材料である牛乳、卵、砂糖のいずれも、プリン体含有量は0ではないが、ほとんど含まれていない。
プリン体とは、プリン骨格といわれる化学構造を持つ物質の総称で、プリン塩基、プリンヌクレオチド(ATP)のほか、核酸にも含まれる。核酸は、グルタミン酸(アミノ酸の1種)と並ぶ旨味成分としても知られる。プリン体は細胞数の多いもの、細胞分裂の盛んな組織に含まれる。このため、悲しいかな、プリン体を多く含む食物は、旨いものが多いのだ。
次ページの表に、プリン体を多く含む食品のリストを示す。
この記事の概要
