昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
世は空前のランニングブーム。週末の皇居周回コースは、ランナーがあふれかえるほどの人気で、更衣室、ロッカー、シャワーなどが完備されたランニングステーションも多数ある。同じ時間を運動するのであれば、歩くよりは走るほうが、運動強度(Mets)が高く(詳しくはバックナンバー「運動編【1】 カロリー消費だけではない、運動の効能」参照)、エネルギー消費効率が高いのは間違いない。減量目的で、一念発起して走ろうという人も少なくないはずだ。
ウォーキングは日常生活の延長にあり、低強度の運動なので、思い立ったその日からでも始められる。が、ジョギング、さらにスピードを上げたランニングとなると、少し注意も必要だ。
まずは危険がないかメディカルチェック

そもそも、メタボや肥満、高血圧、高血糖、脂質異常の解消のために走ろうという人たちの多くは、運動習慣がない(運動習慣のある人であれば、メタボにはなっていないかもしれない)。そうした初心者が、高強度といえるランニングをいきなり始めるのは、時として危険を伴う。ランニング中のアクシデントで最も怖いのは、心臓のトラブルだ。メタボの人は、動脈硬化による心筋梗塞のリスクが高い。一方、高強度の運動であるランニングは、心筋梗塞の誘因となる。
健診で問題があった人は、まずは、再検査で医療機関を訪ねることになるので、そこで、走ってもいいかどうかを相談してみるのがいい。安静時の心電図では問題がなくても、トレッドミルなどで負荷をかけた心電図をとると、潜在的な運動のリスクが見つかることがある。
走ると、足腰にもそれなりに負担がかかる。一般に、歩行時には体重の約2~3倍、走る時には4~5倍の荷重がかかるとされる。膝などに問題がある人は、整形外科的なチェックも要る。気管支喘息のある人は悪化の恐れがあるし、運動時にのみ咳や喘鳴が見られる場合は、運動誘発性喘息の可能性がある。運動誘発性喘息の診断には、呼気ガス分析を用いた運動負荷試験や肺機能検査を受けてみたほうがいい。