昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
メタボ街道をばく進中の日本人を鮮やかに浮き彫りにした久山町研究(前回記事「メタボへの道をひた走ってきた日本人の50年」参照)。地域住民を半世紀にわたって追跡した、世界に冠たる高い精度の疫学研究からは、高血圧や脂質異常症といった、いわゆるメタボ関連疾患だけでなく、悪いデータが続々ともたらされている。
中でも、同研究を統括する二宮利治氏(九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター教授)が注目しているのが、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)だ。
糖尿病が元で透析が必要となる患者が増加
腎臓の濾過機能が働かなくなって、蛋白尿が出るか、もしくは糸球体濾過量(GFR)が、60mL/分/1.73m2未満に低下した腎障害が3カ月以上続くと、CKDと診断される(関連記事「メタボは万病の元、“肝腎”な腎臓にもダメージ」)。腎臓の機能は段階的に衰え、最終段階(5段階のステージ5)では全く機能しなくなって、人工血液透析に頼るよりなくなる。
久山町における1974年、1988年、2002 年の調査に基づいて、CKD頻度を見ると、男性は13.8%(1974年)、15.9%(1988年)、22.1%(2002年)と右肩上がりに有意に(*1)上昇した。一方、女性は、14.3%、12.6%、15.3%と横ばいだった。
しかし、ステージ3~5の中等度以上に限定して、1974年から2002年の変化を追うと、男性が4.8%から15.7%と3倍以上、女性も5.8%から11.7%へと倍増している(図1)。
二宮氏は、「地域住民におけるCKDの原因として最も多いのは、高血圧や加齢に伴う動脈硬化であるが、そのうち透析にまで陥る人は、糖尿病性腎症が多い」と指摘する。
このほか、高尿酸血症なども増加しており、やはり動脈硬化のリスクを高めていたが、「高尿酸血症については、メタボと関係は深いが、全く無関係に発症することもある」という。何もかもメタボのせいにはいけない。痩せた人も気を付けなくてはならないことがたくさんある。
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